最近はコロナウイルスなどのウイルス性疾患が流行していますね。
このウイルスが見つかったのも実はごく最近の出来事なんです。
ヒトの体内に侵入して病気を引き起こすものには大きく分けて「ウイルス」と「細菌」がいます。
大腸菌や黄色ブドウ球菌などは細菌にあたります。
インフルエンザウイルスやヘルペスウイルスはウイルスです。
病気の症状などをみても細菌とウイルスの違いはわかりにくいですが、生物学的に見ると大きく違います。
ウイルスという存在を知らなかった時代で科学者たちがどのように考察していったのか?その歴史はこれから科学者を目指そうとする人にとっても参考になると思います。
今回はウイルスが見つかるまでの歴史について簡単に紹介していきます。
ウイルスが見つかった歴史!
今でこそ当たり前のように知られる「ウイルス」ですが昔はウイルスの存在は未知でした。
細菌の存在こそ知られていましたが、それよりもはるかに小さく見ることができないものの存在を確かめることはとても難しいことです。
ウイルスの存在が疑われるきっかけになったのは、ウイルス学創始者のひとりとされるマルティネス・ベイエリンクによる発見が始まりといわれています。
タバコモザイク病の研究を行っていたベイエリンクは1898年にモザイク病にかかった植物の液を取り出していました。この液体には当時病気の原因と疑われていた細菌が含まれているので、この液体を健康な植物にかけるとタバコモザイク病にかかってしまいます。
そこで、ベイエリンクは細菌のような小さな物体を濾過できる装置でその液体を濾過しました。細菌が原因であれば、濾過した液体を植物にかけても病気にならないはずです。しかし、その液体をかけたところ病気になってしまいました。
ベイエリンクは細菌を濾過できる装置で病原体を含む液を濾過したにもかかわらず、その液体に感染性があることから、タバコモザイク病は細菌よりも小さい物体によるものであると考察します。
一方で、とある科学者は細菌よりも小さな生物によるものではなく、細菌が作り出す毒素(化学物質)によるものであると主張する人もいました。
こめやん
細菌の作り出す毒素はたんぱく質などの物質であるため、濃度が薄くなれば毒性発揮する閾値を下回るので摂取しても症状を引き起こさないはずです。(どんな毒でも薄めまくったら毒性を発揮しなくなる)
しかし、この濾過液を希釈していって、とても薄い溶液にしても病気を引き起こすことが発見されました。
濃度を薄めても発症するということは毒素が増殖していることを示しています。化学物質は増殖できないので、これは細菌よりも小さい増殖能を持つ物体であると解釈できます。
参考 籔井教授の講義シリーズ:第一話「ウイルスは粒子である」 | ベックマン・コールターライフサイエンス分野 - ベックマン・コールター
しかし長らくその存在の正体については不明なままでした。ウイルスの正体を突き止めたのは1935年ウェンデル・スタンリーです。彼はタバコモザイクウイルスの結晶化に成功しました。結晶化できると言う点で物質的な性質を持っていると言えます。
さらにこの物質をよく調べるとタンパク質と核酸のみからできていることを発見しました。
細菌にあるタンパク質合成を行うリボソームなどを持たないことから、ウイルスは自分では増殖できないことがわかります。
ウェンデル・スタンレーはこれらの功績より1946年にノーベル賞を受賞しました。
こめやん
ウイルスの存在を確認した研究者!
ドミトリー・イワノフスキーは1892年にタバコモザイク病の液体を細菌濾過器に通したろ液でも感染性をもつことをベイエリンクとは独立して最初に発見しています。ベイエリンクよりも早く発見しており、ウイルス学の創始者とも言われます。
参考文献リスト
Black, J. G. “ブラック微生物学.” (2003): 127-128.