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溶媒を脱気する方法!HPLCや反応溶媒を超音波や凍結脱気

溶媒の脱気

溶媒はなるべくきれいなものを利用するのが基本です。
今回は溶媒に溶けこんだ気体を除去する方法を紹介します。

脱気の目的

市販の溶媒は純粋そうに見えますが、実は結構気体が溶けています。

この溶媒中に溶けている気体がしばしば問題になります。

そこで溶媒を使用する前に気体を取り除く操作「脱気」を行います。

HPLCの溶離液としての用途における脱気の目的

HPLCは化合物を分離する液体クロマトグラフィー装置です。分離には溶離液を用います。HPLCの溶離液中に含まれる気体から発生する気泡はポンプ送液を邪魔したり、カラム内では分離を邪魔します。

HPLCの溶離液として利用する場合は二種類以上の混合溶媒として利用することが多いですが、これによって気体の溶解度が低下して気泡が発生します。

気体の溶解度は温度上昇、圧力低下によって低下します。そのため、屋外の薬品倉庫にあった溶媒を温かい室内で利用したりすると気泡が発生しやすいです。

化学反応における脱気の目的

反応性の高い空気中の気体は化学反応の進行を邪魔します。

そのため溶媒中から取り除く必要があります。

反応性の高い物質としては

  1. 水蒸気(水)
  2. 酸素
  3. 二酸化炭素

などがあります。溶媒中に溶けた水蒸気を除く操作は脱水といいます。

脱水溶媒の作り方脱水溶媒の作り方

酸素は様々な物質を酸化する反応性の高い物質です。また、意外かもしれませんが、二酸化炭素も反応します。窒素も問題となることがあります。

反応性の高い物質、金属、有機金属錯体などを使用する時は脱気して利用することが多いかもしれません。

  • 高温反応(120℃以上)や高温で長時間反応させる場合
  • 有機金属錯体を利用する反応
  • ラジカル反応
  • その他酸化されやすい物質(フラン等の電子豊富な芳香環、チオール、ホスフィン等)



脱気の方法

脱気の方法はいくつかありますが、ここでは代表的なものを紹介していきます。脱気操作に共通することは「脱気後の溶媒はすぐ使用すること」です。また容量や用途によって脱気の操作を選択します。

減圧脱気

溶媒が入った密閉容器を沸騰しない程度に減圧します。すると気泡が発生します。その後不活性ガスを入れて常圧に戻します。これを何度も繰り返して脱気します。最も簡便な脱気方法ですが効果は小さめかもしれません。

超音波脱気

HPLCの溶離液などを脱気するときによく使います。液体に超音波を当てると振動によって真空が生じるなど急激な圧力変化が起こります。これによって気泡が発生します。

超音波脱気は超音波洗浄機などに入れて数分間当てるだけでも効果がありますが、溶媒が沸騰しない程度に減圧しながらやるとさらに効果がでます。反応に使用する場合はアルゴンなどの不活性ガスで置換、減圧を繰り返して脱気します。

超音波脱気の特徴は、簡単に素早く脱気できるところです。大容量の溶媒を処理するのにも向いています。一方で、厳密に脱気したい場合は凍結脱気などを利用または併用するのがよいと思います。

凍結脱気

凍結脱気は処理できる量が少ないので、HPLC溶媒への利用には向いていませんが、高いレベルで気体を除去できるので化学反応溶媒の脱気に向いています。しばしば、超音波脱気と併用します。

アルゴン置換下で密閉された容器に入った溶媒を液体窒素(ドライアイス-アセトン)で完全に凍結させます。その後、真空に減圧し5分くらい引きます。その後温めて液体に戻したあと、再度凍結して同じ操作を3回ほど繰り返します。これにより溶媒中の気体は除去できます。

ガス吹き込み(パージ)

アルゴンを溶媒中に吹きこむ(バブリング)と酸素や窒素などが除去されます。1時間くらいバブリングします。簡単ですが沸点が低い溶媒では蒸発していくので注意が必要です。容器が冷えたりするので水の混入がないように気を払う必要があります。

化学反応剤の添加

酸素の除去に関しては還元剤を添加する方法もあります。LiAlH4やNa-ベンゾフェノン系などがあります。主にこれらは水も除去可能なため、溶媒蒸留とともに用いることが多いです。

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