歯磨きをする時にオエーとえずくことはありませんか?
最近なりやすくなったという人もいるかもしれません。ひどい人は嘔吐する人もいます。実は体調によって反応性は変化するようです。こうした反応は一体なぜ起こるのか?を紹介していきます。
歯磨きでオエーとなるのはなぜ?
歯磨きするとオエーとなる人も多いと思います。
これは程度にもよりますが、いたって自然な反応です。
歯ブラシのような物体が咽頭周辺の軟口蓋など(のどの奥のほうで柔らかくなっている場所)や下の奥のほうに触れると咽頭反射(絞扼反射)が起こります。
体には「体内に入って来ようとする異物を外に出そう」という防御反応があるので、歯ブラシだけでなく、においや味、触感など食べ物とは思わないようなものが口に入ってくると吐き出そうとしてしまいます。
この反射の働きが敏感な人と敏感でない人がいます。これには個人差がありますが、実は体の調子によって変化します。
嘔吐に関わるメカニズムは経路が複雑ですべてがわかっているわけではありません。
咽頭周辺の刺激によっておこる吐き気はのどの奥の神経から求心性神経をたどって中枢神経に信号を送り、中枢神経が運動器に信号を送り嘔吐が誘発されます。相対的に敏感な人や鈍感な人もいます。敏感なひとはのど周辺でなくても奥歯周辺に触れても反射を引き起こしたり、薬(錠剤や粉薬)でえづいて飲めなかったりします。普通の食べ物でも吐き気を催す場合があります。
齋藤春雄. “嚥下反射と絞拒反射.” 耳鼻咽喉科臨床 86.2 (1993): 302-303.
最近歯ブラシでオエーとなりやすくなった?
年齢などによって若干変化するようですが、いきなりえづきやすくなったり、逆にならなくなった場合は注意が必要かもしれません。
妊娠の初期
妊娠の初期(5~6週)までに、吐き気や食欲不振などの症状を呈することがあります。この時には、歯みがきも含めて、においや味などによっても吐き気が誘発されます。多くの妊婦さんでみられる普通の症状です。
原因は不明ですが多くの場合は妊娠後期になるにあたって自然に治ります。
野田哲哉. “妊娠初期におけるつわり, 動揺病, めまい.” 耳鼻と臨床 43.4 (1997): 478-481.
抗がん剤治療
吐き気を抑える薬として(制吐剤)として5-HT3アンタゴニストが使われているように嘔吐には「セロトニン受容体」が関わっています。特に抗がん剤治療を行っている場合に起こりやすく、歯磨きによるえづきも強くなる傾向があります。においにも敏感になるので
嚥下障害
物が飲み込みにくくなる嚥下障害はQOLを低下させ、高齢者では誤嚥性肺炎や窒息などの命に係わるため問題となります。
嚥下障害の原因は加齢もありますが、消化器の炎症(食道炎)、脳障害(脳卒中や脳腫瘍など)、精神疾患(うつ)などがあります。嚥下障害が起きているときには咽頭反射が抑えられる傾向があるので、もしも最近オエーってなりにくいと感じた場合、もしかしたら脳卒中などの病気が隠れているかもしれません。
Davies, A. E., et al. “Pharyngeal sensation and gag reflex in healthy subjects.” The Lancet 345.8948 (1995): 487-488.
オエーとなる感覚を治す方法・減らす方法
あまりにもえづきがひどい場合は病院に行くことをおすすめしますが、この感覚を訓練して慣れる方法もあります。
オエーとなっても続ける
たいていの場合のどに近い部分まで歯ブラシを持っていくとオエーとなると思います。そのギリギリのところを攻めてどのあたりで起こるかをまず知ります。そしてオエーとなる境界の部分をオエーとなっても10秒間続けるのを1か月くらい続けると慣れるようです。実施するときは吐くまでやってしまうと体に悪いので無理のない範囲で実施しましょう。
電動歯ブラシを使用するのも良い方法のようです
参考 Gag Reflex Problems with your gag reflex取得できませんでした
歯磨き粉を変える
吐き気は歯ブラシによる物理的な刺激以外にも、においや食感(粉)、味の刺激によっても誘発されます。人によって苦手なにおいや味などは違うので自分に合ったものを選べば減らすことができるかもしれません。
歯ブラシを柔らかいものにかえる
かたい歯ブラシを使っている場合は柔らかいブラシに変えると改善される可能性があります。なるべくブラシの部分が小さいもののほうが起こりにくいようです。