TLC(薄層クロマトグラフィー)の検出法の一つにヨウ素を使った検出があります。今回はこのヨウ素を使った検出の原理を解説します。
ヨウ素で検出できるもの
ヨウ素は有機化合物全般を検出することができる万能発色試薬です。特に二重結合などの不飽和結合を含む分子を良く染色しますが、極性化合物も結構検出できます。他の万能発色試薬にはない利点は加熱の必要がないことと可逆的に染色できることです。ヨウ素は可逆的に化合物と結合するのでヨウ素染色した後、放置してヨウ素が抜けた後に別の染色試薬を用いることができます。濃度が濃かったり化合物によってはヨウ素が抜けるまで割と時間がかかりますが1枚のTLCで複数の染色を試せるのは良いですね。また、調製はヨウ素を適当に加えて密栓するだけなのでとっても簡単です1) 。
染色後のTLCは放置するとヨウ素が抜けてスポットが見えなくなるので、UVと同様に鉛筆でしるしをつけるか写真を撮りましょう。
ヨウ素で検出できる原理
ヨウ素の検出原理は、ヨウ素昇華することで有機化合物に吸着する性質を利用します。化学反応ではなく物理的な吸着(相互作用)でヨウ素がくっついています。特に不飽和結合と相互作用しやすいと考えられています。例えばベンゼン環とヨウ素とでは、π電子豊富なベンゼン環からヨウ素へ電子が移ったような形になり、電荷移動錯体を形成します。アミドなどのカルボニルも電子豊富な酸素とヨウ素とで可逆的な結合を形成することにより呈色します3)。
実験方法
ヨウ素を使った検出法には二種類の方法があります。
1. ヨウ素蒸気を使った検出
ヨウ素は昇華性のある個体なので、密閉空間においておくとヨウ素の蒸気が飽和します。そこにTLCを入れておくとヨウ素の蒸気が有機化合物に優先して吸着するのでスポットが呈色してきます。
2. ヨウ素シリカゲルを使った検出
ヨウ素蒸気を使った場合の呈色は少し遅いです。しかしながらヨウ素をあらかじめシリカゲルに吸着させておいたヨウ素シリカゲルを用いることで、TLCにヨウ素を吸着させる表面積が増えるので、素早く呈色できます2)。
参考文献
1)Donald L. Pavia、 Gary M. Lampman、Introduction to Organic Laboratory Techniques: A Small Scale Approach, Pacific Grove, California, 2005
2) Roberbon, John. “An improved method for visualizing TLC plates using iodine.” Journal of Chemical Education 62.2 (1985): 156.
3)a)田仲二朗. “電荷移動力と分子間化合物.” 化学と生物 8.2 (1970): 65-72.,b) Tsubomura, Hiroshi, and Robert P. Lang. “Molecular complexes and their spectra. XIII. complexes of iodine with amides, diethyl sulfide and diethyl disulfide.” Journal of the American Chemical Society 83.9 (1961): 2085-2092.
全てのTLCの記事は以下のリンクから!
参考文献を載せてほしい
参考文献を載せておきました。有機合成実験などを取り扱う書籍にもよく取り上げられているのでそちらも参考にしてください