仕事など複数の人と一緒に何かに取り組むのが当たり前になっていますが、なぜ「チーム」を組むのでしょうか?
それはチームで問題解決にあたるほうが効果的だと考えられているからです。
しかし、単に複数の人と共同作業することが大きな成果をあげることには繋がりません。むしろ個人でやったほうが効率的な場合もあります。
googleではプロジェクトアリストテレスと称したプロジェクトを通して「効果的なチームを作る条件」を研究しています。
本記事ではチームワークを最大化する方法や条件についてGoogleの事例をもとに考察していきます。
チームとグループの違い
人が複数人集まった集団の呼び方には「チーム」と「グループ」があります。
普段何気なく使う言葉ですが、実は意味が違います。
- グループ:個々の役割は不明瞭で達成したい特定の目標は無い
- チーム:個々の役割が明確で一つの目標達成のために組織された集団
つまり、グループは友達同士や飲み会など自然に集まった集団ですが、
チームは問題解決のために能動的に集められた集団で、達成したい共通目標があります。
目標が共有できていない、個々の役割が明確でないとチームとは呼べないわけです。
こめやん
チームの成果を最大化させるものとは?
googleのリサーチの結果、チームの成果を最大化させる要素として重要なことは
メンバーの能力などではなく、チームがどのように協力できているか?が重要であると報告しています。
チームが協力するのに必要なものは
- 心理的安全性
- 信頼
- 仕事や成果が簡潔で明確であること
- 目標達成に対する目的意識
- チームへの貢献感
などを挙げています。
一方で従来重要と考えられてきた要素があまり重要ではなかったものもありました。
- メンバーとの物理的距離(デスクの近さ等)
- 合意に基づく意思決定
- メンバーの外向性
- 個人能力
- チームの大きさ
- 在職期間
などです。
有能なチームとか、実力があるチームを想像すると「個人の能力が高く、外交的で、経験豊富でチームの合意に基づいて行動できるチーム」だと思ってしまいますが、こうした要素は実は効果的なチームを作ることとはあまり関係がなかったんですね。
注意! グーグルのチームに対する研究結果は全てのチームに当てはまるわけではないことに留意しておきましょう。
心理的安全性とは?
Googleが挙げた効果的なチームを作るために必要な要素は5つありました。
- 心理的安全性
- 信頼
- 仕事や成果が簡潔で明確であること
- 目標達成に対する目的意識
- チームへの貢献感
このなかでも、最も重要であると考えられているのが「心理的安全性」です。
聞きなじみがない単語だと思いますが、心理的安全性はGoogleが考える効率的なチームワークを実現するのに最も重要な要素です。
心理的安全性とは「失敗してもチームメンバーからばかにされたり、否定されたりすることが無いという安心感」を指します。
つまり、心理的安全性が高いチームでは「自分の考えを積極的に言え、積極的に行動を起こせる環境」であるということですね!
心理的安全性が高いチームでは、チームメンバーが自身を飾ったりすることなく、ありのままの姿で素直に仕事に取り組むことができます。必要な時には助けを求め、アイデアを提案し、意見を主張し、挑戦を恐れず、失敗を隠したり、不正を働いたりすることがなくなります。
それでは、チーム内で心理的安全性を特に意識すべき人はどんな人でしょうか?
それはリーダーや上司など立場が上の人です。なぜなら、上司など立場が上の人に対しては心理的安全性が低くなる傾向があるからです。上司よりも同僚のほうが心理的安全性が高いと感じたことはありませんか?このように、心理的安全性の高さは一定ではありません。
心理的安全性を高めるために
チーム内で心理的安全性が生まれてしまう一つの原因として「メンバーとの比較」があります。
チームではどうしてもできない人が目立ちやすく、これがさらに言動や行動を消極的にさせます。あなたも、いたずらに上司や能力の高い人を恐れたり、迷惑をかけたくないと感じてしまったことはありませんか?
それでは、心理的安全性を高めるためにリーダーが、みんなができることは何かないのでしょうか?
心理的安全性を高めるためには
- 互いの弱みをさらけ出す
- 非難しない
- コミュニケーションを積極的にとれるようにする
- 意見を求める
- 互いの能力やスキルを把握して尊重しあう
- 他者と比較するなどして競争をあおらない
などがあります。
こめやん
心理的安全性を高める方法、これらに共通することは何だと思いますか?
それは「好奇心」と「謙虚さ・思いやり」です。
他人に対して興味を持つことで自然と相手への質問が増え、コミュニケーションは増加し、相手の意見を知ることができます。
謙虚さを持っていれば「いかに能力が高くても自分が常に正しいわけではない」「誰もが間違い、失敗する」ことを受け入れられるはずです。
謙虚さについては「知的謙虚さ」が重要
好奇心を以って積極的に他人の意見に耳を傾け、謙虚さを以って視野を広く保ち、物事を注意深く検討できれば、文化や意見、能力の違う人間を尊重し、受け入れることができるようになるはずです。
お互いを受け入れることがすなわち、心理的安全性を高めることと言えます。
こめやん
次に、私が考える心理的安全性を高める具体的な方法について紹介します。
みんな違う人間であるという共通認識を持つ
チームワークというとどうしても和を乱さないことに意識が集中しがちで、大胆な発言やアイデアを提案することが難しくなります。チーム内で合意を作ることは重要ですが、前提として「そもそもお互い誰一人として同じ考えや意見ではなく、合わせるのは難しい」ということを理解し、共通認識を持つことが重要です。
みんな違うことを理解することが多様性を認める土壌の形成につながります。
特に上司は
- メンバーの意見を伺う
- 意見が食い違った場合はその理由を考える
- どんな意見であっても否定しない
- 自分と意見が違う場合はなぜそう思うのか?を質問する
- 様々なアイデアや意見がでること自体を評価する
- 好奇心や興味を持つ姿をメンバーに見せる
このようにすればチーム内の雰囲気が良くなるはずです。これらの方法は上司に限らずメンバー全員が利用できます。
弱みをさらけ出す
心理的安全性の低下は他人からもたらされるものばかりではありません。自分が勝手に低くしてしまう場合もあります。
例えば、弱みや能力の低さを見せることによって「自分のネガティブな印象を相手に与えてしまうのではないか?」という不安が心理的安全性を低くさせてしまいます。
確かに人はネガティブな印象に引っ張られやすく、決めつけされたり、マウントをとられるなど自分にとって不利な状況をもたらすことがあるため、あるいは自分のプライドを傷つけないためにも相手にネガティブな印象をなるべく与えないというように行動してしまいがちです。
したがって、どんな場合にもそうであるとは言えませんが「不利な面を見せること」は人間関係の構築にもチームの生産性をあげることにも効果があります。
こめやん
不利な面を見せるとは、自分の能力的な弱み、知らないとかわからない、できないことなどをさらけ出すことです。
能力が優れていたり、評価する立場の人に対しては弱みを見せにくくなります。しかし、チームはチームメンバーの格付けを行うために存在しているのではありません。あくまで目標を達成するために存在しているのです。したがって、強みや弱みを互いに共有する必要があります。できないことも知らないことも重要ではないのです。何ができなくて、何が知らないのか?をチーム内で理解することがということが重要です。
したがって、積極的に自らの弱みをさらけ出しましょう。
そうはいっても難しいはずです。弱みをだせる環境にするためには能力の高い人や上司が積極的に弱みを見せることが重要です。
そうすると、「あんなにできそうな人なのに○○はダメなんだ」というように「みんな私と同じ普通の人間なんだ」というような感覚を覚えさせることができます。
弱みをさらけ出した人も変なプライドがなくなり素直になることができます。互いの弱みを知ることでその弱みをチーム内でバックアップすることができるし、何よりも弱みを見せること人間関係の距離感を縮めてチームの結束感を高めることが可能です。
こめやん
非難しない、比べない、評価しない
相手の意見に対して否定したり、非難しないようにすることが重要です。
こめやん
相手と意見が食い違っても、明らかに違うなと思っても否定せずに「なぜそう思うのか?」質問するようにします。そして自分の意見を述べてどう思うかを質問するようにします。意見に対して良い悪いを意識させないことが重要です。
他人同士の比較もやめましょう。チームに必要なのは競争ではなく協力です。良い意見を言おうとか、良い結果を残そうと顔色を伺うようになり、外発的な動機付けが行われてしまいます。
また、意見やアイデアなどに対する評価は避けたほうが良いと思います。実行した結果に対して評価するべきだと思います。
コミュニケーションをとれるようにする
コミュニケーションは重要ですが、これを強調しすぎると、ただ会話をすれば良いとか、友人のように雑談したり、無理に仲良くなったりしようと考えるひとが現れます。ただ、会話をすればよいわけでも、無理に仲良くする必要もありません。
コミュニケーションをとれるようにする条件・環境づくりが重要です。コミュニケーションは一方的に生みにいくものではなく、生まれるものです。
それではどのようにしてそういった環境を作ることができるでしょうか?
コミュニケーションが生まれる環境を作る方法
一つは、「他者に興味を持つこと」です。
相手がどういう人間か?ということを知ろうとする好奇心を持つことです。会話をしようと考えてしまうと、自分を知ってもらおうと考えすぎて自分ばかりが話してしまい、相手に注意が向かなくなります。
こめやん
こうなると、相手は会話をしてくれなくなっていくので、いつも自分から話しかけているというような状況になっていきます。
これでは、会話をしているのにコミュニケーションはどんどん生まれない環境になっていきます。
では、どうすればコミュニケーションが生まれる環境にできるのか?
それは「相手に興味を持つこと」です。自分を知ってもらうための近道は相手を知ることです。
相手に興味をもって接することで相手の話をよく聞く姿勢になります。話をよく聞いてくれる人に対して人間は親しみを覚えます。すると相手はあなたの話を聞いてくれるようになります。コミュニケーションの重要な要素は互いに話を聞こうとするスタンバイ状態になることです。こちらが話す時相手がスタンバイ状態かは見分けがつかないのでまずはこちらが聞く姿勢になったほうが効率的です。
こめやん
友達と雑談ができるのは相手のことをよく知っているからです。いつも一緒にいなくても話が弾むのは、相手が自分のパーソナルな情報を話してくれるからです。こういった信頼関係の構築なしでは、雑談ができても、いくらできても関係構築は困難です。相手が素直に意見を言ってくれる関係が構築できればたいていの話題で話は弾むのではないでしょうか?
無理に仲良くする必要が無いのは、下手に仲良くしようとするとどちらかが相手に無理に合わせるということが起きやすいからです。相手をよく知れば自分と意見や価値観、性格が合う合わないなどがはっきりしてきます。相手を受け入れることと友人や家族のように仲良くすることは別です。
上司が注意すべきこと
立場が上になってくると会話できてればよいとか、雑談できるから良いと考えてしまう傾向があります。メンバーとの会話を思い出して、
- 話題は自分ばかり提供していないか?
- 自分だけが話していないか?
- 質問はしているか?
- メンバーから会話をしてくるか?
- 質問はくるか?
をチェックしましょう。関係構築できていないのにプライベートな話ばかりしようとしても意味がありません。むしろ、はじめは仕事の話を通して関係を構築すべきです。
意見を求め、考えを聞く、そして意見を述べる
何を考えているのか?どんな意見を持っているのか?を積極的に話す人は限られています。
意見やアイデアはしまい込んでしまう人は多いのではないでしょうか?。
上司は特にメンバーの意見を聞くようにしましょう。たいていは、自分のアイデアが批判されることに対して不安感を持っていることが、意見を言えない原因です。自分から言い出すのが苦手な人もいます。紙に書きださせるという方法もあると思います。
言い出した意見も避難したりしないということが分かれば主張しやすくなります。また、意見を主張できる人は、不完全な低レベルなアイデアも積極的に出すようにしましょう。勝手にこの意見は使えないとしまい込んでしまったアイデアがプロジェクトを良い方向にもっていく場合もあります。
アイデアや意見にもならない不完全な考えでも話させるようにすれば自然と自ら話してくれるようになってきます。そのためにも興味を持って聞くようにします。そして自分の考えも述べるようにします。この時も相手の意見を否定したり馬鹿にしたりする態度を一切見せてはなりません。
前向きな姿勢を崩さない
ネガティブなことを前向きに解釈するような雰囲気づくりは心理的安全性を高めるうえで重要です。
人は誰もが間違い、失敗します。メンバーが意見を主張した際も否定するのではなく、受け入れて前向きに検討する姿勢があればもっと意見を言ってくれるようになります。失敗もメンバーにとって有益な情報であり、失敗を経験と前向きにとらえることでネガティブなイメージを払拭することできれば、もはや失敗を恐れる必要はなくなります。むしろたくさんの挑戦は失敗を含めたたくさんの経験が得られるというように考えられるのでメンバーが積極的な行動をとれるようになります。
まとめ
ここでは、Googleの研究成果をもとにしてチームの成果を最大化する方法について紹介しました。チームによって最適な方法は異なると思いますが、ここで挙げられたことは多くのチームに対して有効なことばかりで、さらに仕事以外にも身の回りの人間関係を作っていくうえでも役に立つことばかりです。
今回は心理的安全性についてフォーカスしましたが、ほかに
- 信頼
- 仕事や成果が簡潔で明確であること
- 目標達成に対する目的意識
- チームへの貢献感
があります。信頼に関しても心理的安全性を高めることができれば自ずと得られるものであると思います。他の項目に関しては最初に検討してシステム化すればそこまで難しくないように思います。
合わないチームからは抜けたって良い
チームというと心を一つに「融合」するという感じがありますが、そういったチームは非現実的であり、チーム内の人間関係をぎくしゃくさせたり、一部の誰かが負担を強いられるような生産性なチームを生み出す原因にもなります。
全てを一つにするという考えは捨てて、一緒にするの目標・目的、進路であり、個々は別々で独立しているがそれぞれを尊重し受け入れる価値観が重要なのではないでしょうか?
ここがおかしいとか、こうしたほうが良いと意見が言えないチームになっていませんか?そんなチームからは抜けたって良いのです。チームは一人では作れません。