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SN比とダイナミックレンジ 化学分析性能の指標!

SN比とダイナミックレンジ

SN比とダイナミックレンジは電気信号を取り扱う機器の性能を表す指標です。SN比はノイズに対する目的の信号の割合であり、SN比が大きいほどノイズの影響が少ないといえます。一方でダイナミックレンジは最小の信号と最大の信号の比でどのくらいの幅の信号が識別できるか?を表す指標です。

SN比とダイナミックレンジは音響機器などの電子機器だけでなく蛍光顕微鏡や紫外吸光測定、蛍光測定などさまざまな化学分析でも登場します。

SN比とは?

SN比 (signal/noise ratio)は測定したい・目的の信号(signal)とそれ以外のいらない信号(noise)の強度の比率 (signal ÷ noise)です。

SN比が大きいほうが目的の信号(signal)の割合が大きいということになるので、目的の信号が検出しやすくなります。

一方で、SN比が小さければ目的の信号が周りのノイズに埋もれてしまうので検出しにくくなります。

SN比の概念

SN比の概念図 (強度は負の値をとる場合があるため、分散(二乗)あるいは絶対値を計算します)

シグナルに対してノイズが小さいほどシグナルは目立つので検出容易です(上図-左)。

一方でシグナルに対してノイズが大きかったり、シグナルが小さくてノイズに埋もれたりする場合はシグナルが検出し難いです(上図-右)。

こめやん

図のどちらも場合もシグナルがどれかはわかるので、別にSN比が高くなくてもよいのでは?

確かにシグナルの検知だけで言えば、ノイズよりも高くなっていれば、検出することはできるかもしれませんが、検出しにくく、エラーが起きる可能性があるので、SN比が高い方が良いです。

SN比の影響は電話での会話をイメージするとわかりやすいです。

SN比が低い電話では話声(シグナル)に対して雑音(ノイズ)が多いので話し声が聞き取りにくくなります。

SN比が低いと聞き取りにくいので大声を出してもらわなければなりません。

一方でSN比が高い電話では、話者(シグナル)の割合がノイズよりも大きいので、クリアに聞こえるので聞き取り間違いなども起きにくくなります。

こめやん

SN比が高い電話の方が話声が聞き取りやすい高品質なものであるということですね

確かにSN比が低くてもシグナルを検出できないわけではありませんが、よりSN比が高いほうがシグナルの聞き取りやすさ(検出)がしやすく、信頼性が高いです。


ダイナミックレンジとは?

ダイナミックレンジは測定できる信号の最小値と最大値の幅のことです。
最小値と最大値の幅が大きいことをダイナミックレンジが広いと言います。

聴力の例をイメージするとわかりやすいです。

人間の耳は小さい音量も大きい音量も聞きとることができます。聞き取ることができる最小音量と最大音量の比率がダイナミックレンジです。
スピーカーの音量が1と100まで聞き取れれば、1:100というように表します。

ダイナミックレンジが狭いひとは、小さい音量が聞き取れないひと、10:100とか両方聞き取れない人10:80というように聞き取ることができる音量の幅が狭いです。
ダイナミックレンジが広いひとは、小さい音量が聞き取れる、0.01:100のように聞き取れる幅が広がります。

ダイナミックレンジが広いほうが幅広い範囲でシグナルを検出することができます。

HDR(High dynamic range)撮影

HDR撮影モードというものがスマートフォンなどのカメラ機能に搭載されているものがあると思います。このHDR撮影は、文字通りダイナミックレンジが広い写真を撮ることができます。
ダイナミックレンジが広いとは、写真で言えば、最も明るいピクセル(画像を構成する点)と最も暗いピクセルの差を意味します(これをコントラスト比といいます1:10000とか)。

人間の目でもそうですが、明るい所からくらい所に行くとすぐには目が見えるようになりません。これは目のダイナミックレンジが狭いからです。
カメラも同様に夜間に撮影するときに、明るい部分に合わせて写真をとると、明るい部分はよく撮れますが暗い部分が黒に潰れてしまいます。一方で、暗い部分に合わせて写真を撮ると明るい部分が白っぽく潰れてしまいます。
そこで、両方の写真のよく撮れている部分を合成することで暗い部分も明るい部分もはっきりと撮れている写真(ハイコントラスト、ハイダイナミックレンジ)を撮影することができます。

リニアダイナミックレンジ

直線性は定量において重要な概念です。タンパク質濃度の分析に吸光度や蛍光を用いるとき、濃度と吸光度は比例関係になります。

検量線の例1

検量線の例 縦軸:タンパク質量濃度、横軸:吸光度

上のグラフの吸光度0.2-0.5の範囲では直線性を保っていますが、これらの範囲外では

吸光度が0.1よりも小さくなったり、吸光度が0.6よりも大きくなったりすることが起こります。

検量線の例2

検量線の例2

このように直線性が保たれていない範囲では吸光度からタンパク質量を求めることはできません。

上のグラフの式から導き出せるのは直線性を保っている吸光度0.2-0.5の範囲でしか定量することができないです。

このような直線性を保っている範囲(定量可能範囲)のことをリニアダイナミックレンジと呼びます。

吸光度などから定量するような場合は、たとえ超低濃度で検出できたとしても、その変化が線形でなければきちんとした定量ができないので、直線性を保っている限界の範囲を求めなければなりません。

こめやん

定量できる吸光度の下限と上限は重要なので確認が必要です。リニアダイナミックレンジは例えば104と表します。

こめやん

測定対象の化合物自体のダイナミックレンジと測定機器のダイナミックレンジがあるので注意しましょう。

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