セレンって効き馴染みがないかもしれませんが、実は栄養素として人体に必須の元素なんです。
今回はこのセレンがどんな食品に入っていて、どんな効果があるのか?とり過ぎは毒か?ということをとりあげます。
目次
セレンとは?
セレンは酸素や硫黄と同族のカルコゲン元素と呼ばれる元素です。性質としては硫黄に近くて金属的な性質もあるような感じでしょうか。
1817年にイェンス・ベルセリウスという化学者に発見されています。
セレンはガラスの着色料(赤系)、ガラスの消色剤、合金、半導体など意外と使われている元素ですね。有機合成ではセレン酸化などで使われたりもします。
セレンが必須って本当か?
セレンが動物にとって必須な元素であることは1957年Klaus Schwarzらによって発見されました。(JACS, 1957, 79(12) pp3292-3293)
後に1979年中国の風土病である克山病(致死性の心筋障害)がセレン欠乏症によるものであることが認められてから、研究が盛んになりました。長期間点滴栄養の患者にも克山病と似た症状が出てたことなど、セレンの栄養としての重要性が叫ばれました。
食品中に含まれるセレン
セレンを多く含む食品として
魚介類、畜産物、穀物類が挙げられます。穀物のセレン量は土壌中のセレン量が影響します。ニュージーランドやフィンランド、米国北東部などは少なく、中国中央部、ベネズエラなどは多いです。畜産物も飼料由来のセレンです。(フィンランドでは穀類の肥料にセレンを添加している)
セレンの一日摂取量は50-200 ugとされています。日本人の重要なセレン摂取源は魚介類です。しかし、セレンの摂取は十分とは言えない現状です。魚介類ではマグロやカツオがセレン量が多いのですが、同時に含む水銀によってその効果が減弱されている可能性があるため、セレン量の割に有効性は低くなっていると考えられます。有効性が高いセレン摂取源としては、酵母、小麦、アルファルファです。
穀類ではスパゲッティが高いセレン量(1600ng/g)です。[食パン(164ng/g), 白米(46.6ng/g),さつまいも(1.7 ng/g)]
魚介類ではたらこ(1252 ng/g)、まぐろ(875 ng/g),かき(536 ng/g),ブリ(491 ng/g)
他に卵黄(699 ng/g)が高かった。
ref) 日本栄養・食糧学会誌, Vol.41 No.2 91~102 1988
たらこスパゲッティはセレン摂取料理として良いかもしれないですね
サプリメントのセレンの原料は、セレン強化酵母で、主なセレン体はセレノメチオニン(6-8割)でついでセレノシステインとなっている。このセレン源は亜セレン酸ナトリウムでその残存量は1%以下で健康安全上は問題とならない数値である(セレンも毒性がある)
生体内のセレンの動態
食品中、生体中に含まれる有機セレンは、セレノメチオニン(SeMet)、セレノシステイン(SeCys)といったアミノ酸の形をとっています。セレノメチオニンは最も吸収性が高いです。吸収経路は小腸から吸収、ヘモグロビンに結合し、肝臓や筋肉に蓄積します。(筋肉のミオシンのシステインと結合)
排泄は主にセレン糖として尿中に排泄される。セレンの過剰摂取はジメチルセレニドが生成し、呼気中に排泄される(ジメチルセレニドはニンニク臭:硫黄のジメチルスルフィドに近いから)代謝によって生体内にはいくつかのセレン化合物が存在していると推定されている。
ref.) Suzuki, Kazuo T. Journal of health science 51.2 (2005): 107-114.
セレノシステインはグルタチオンペルオキシダーゼに組み込まれ、活性酸素の除去、ラジカル消去機能をビタミンEやビタミンCと協調して行います。
セレンの毒性
セレンは過剰摂取すると吐き気や下痢、頭痛などの症状を引き起こす。サプリメント摂取などで大量にセレンを摂るのはやめたほうが良いでしょう。ただし、現代人になって、あまり魚介類を食べない人などはセレンをサプリなどで摂取しても良いかもしれません。ただし、過剰症があるので、食事からの摂取を基本としたほうが安全だと思います。