レポーター遺伝子アッセイとは、特定の遺伝子の調節によってどういったタンパク質が増えるのかを調べる手法で、転写調節因子などを調べるために良く使われる手法です。
今回は生物に詳しくない方にも分かりやすく説明します。
レポーター遺伝子アッセイの目的
レポーター遺伝子アッセイを行う主な目的は、何らかのシグナルを使って遺伝子に影響を与えた場合、特定のタンパク質がどれぐらい増えるのかを調べるためです。
身体の機能の多くを担っているのはタンパク質であり、その設計図が遺伝子です。そしてその遺伝子からタンパク質を作るには、転写と翻訳というプロセスが必要になります。転写と翻訳を簡単に言うと、転写がDNAからRNAが作られる、翻訳がRNAからタンパク質が作られるプロセスになります。
転写のスタートには、プロモーターやシグナル応答配列などの「転写調節領域」が関与していて、これによって目的の遺伝子の転写量が調節されています。この転写量を調べることができると、特定の刺激やシグナルが起きたときに、特定のタンパク質がどれぐらい増えるのかを測定することができます。
通常このような転写の量を測定するにはいくつかの方法があって、転写後のRNAを測定する方法(定量PCR)、翻訳後にできたタンパク質を測定する方法(ウェスタンブロット等)があります。しかしながらこれらの方法では定量性や簡便さという点からいくつか課題があります。
レポーター遺伝子アッセイの原理
レポーター遺伝子アッセイは、目的としている遺伝子とレポーター遺伝子を組み替えることによってどれぐらいの発現量があるのか調べる方法です。
レポーターというのは簡単に言うと、量を測定するのが簡便なタンパク質のことです。よくある例で言えば、ホタルの光に関与しているルシフェラーゼやクラゲの光に関与しているGFPなどの光るタンパク質のことです。光るタンパク質なら分光計などで簡単に量を調べることができます。
レポーター遺伝子は、言葉そのままレポーターを発現する遺伝子のことですね。これと目的の遺伝子配列を入れ替えてあげれば、目的の転写調節領域に刺激が行ったときにレポーターが発現することになります。そうすることで、どれぐらい転写が起こっているかを簡単に測定することができます。
レポーター遺伝子の種類
レポーター遺伝子にもいくつか種類があります。それぞれ以下のようなタンパク質(レポーター)を発現する遺伝子を導入します。主に使われているレポーターとしては以下になります。
- 緑色蛍光タンパク質(GFP)
- ルシフェラーゼ
- β-ガラクトシダーゼ
- 胎盤由来分泌型アルカリホスファターゼ
- クロラムフェニコールアセチル転移酵素(CAT)
- ヒト成長因子
よく使われているものとしてはGFP、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼになると思います。確認や補正のために二種類入れてアッセイを行う場合もあります。
遺伝子の導入(トランスフェクション)
レポーター遺伝子アッセイには、目的の遺伝子とレポーター遺伝子を入れ替える必要があり、このような操作を遺伝子導入(トランスフェクション)と呼びます。
遺伝子導入法にもいくつか種類があります。
- 化学的導入法
- 生物学的導入法
- 物理学的導入法
化学的導入法
- カチオン性脂質媒介性導入
- リン酸カルシウム共沈殿法
- DEAE-デキストラン法
導入法
- アデノウイルス
- レトロウイルス
- レンチウイルス
- アデノ随伴ウイルス
- バキュロウイルス
- ワクシニアウイルス
- 単純ヘルペスウイルス
物理学的導入法
- エレクトロポレーション
- 遺伝子銃による微粒子の導入
- 直接マイクロインジェクション
- レーザー法によるトランスフェクション