アジドは接触還元などにより還元されてアミンを生成します。アジドはアルキルハライドを基質に置換反応により容易に導入できるので便利です。ニトリルでは一炭素増炭しますが、アジドは炭素数は変化しません。アルコールをアミンに変換する方法として、スルホン酸エステルやハライド→アジドを経由してアミンに変換する方法はステップ数は多いですがクリーンに進行するため良く利用されます。
アジドの導入ー還元でアミンを得る
アジド(N3)はアジ化ナトリウムなどの塩と脱離基を持つ基質と置換反応によりアルキルアジド、ベンジルアジドを簡単に合成できます。
アルコールをアミンに変換する際も、アルコールを脱離基に変換し、アジドに変換すれば還元によりアミンに変換することができます。
アジドの還元方法
アジドの還元方法には複数の方法がありますが、Pd/Cによる接触還元が簡便です。
- 接触還元
- ヒドリド還元
- シュタウディンガー反応
接触還元に弱い官能基がある場合はヒドリド還元剤(LiAlH4、NaBH4/NiCl2)やトリアルキルホスフィンを用いたシュタウディンガー反応などを用いると良いです。
接触還元
アジド(5 mmol)ギ酸アンモニウム(25 mmol)をMeOH(10 mL、0.5 M)Pd/Cを加えて攪拌し、ろ過除去して95%で得た。(論文はフロー系で実施)
ギ酸アンモニウムを水素源として接触還元でアミンを得ることが可能です。もちろん水素源は気体水素でもOKです。
ヒドリド還元
アジドはLiAlH4などのヒドリド還元剤でアミンに還元できます。NaBH4は還元力が弱いですが、NiCl2やCoCl2などを加えるとアジドを効率的に還元できます。
アジド体(10.0 g、34.0 mmol)とNiCl・6H2O(8.07g、34.0mmol)MeOH(226mL)に、水素化ホウ素ナトリウム(1.93g、51.0mmol)を0℃で6回に分けて加えて0℃で3時間撹拌した。濃縮し、1 N NaOH(350 mL)とEtOAc(350 mL)を加えてセライトでろ過し、分液、濃縮、目的物を90%で得た。
LiAlH4を用いるよりも高い選択性でアジドを還元できます。硫酸銅を加える例もあります(Zhang, Bo and Studer, Armido Organic Letters, 15(17), 4548-4551; 2013)。
シュタウディンガー反応
シュタウディンガー反応はホスフィンを加えるだけで反応が進行します。接触還元と比べて選択性は高いですが、ホスフィン由来の副生成物が生じるため確実に精製が必要となるのが欠点です。
トリフェニルホスフィン(6.7 g、25.56 mmol)を水(15 mL)アジド体(3.8 g、17.4 mmol)MeOH(40 mL)溶液に加えて2時間加熱還流した。濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製して目的物を90%で得た。
トリメチルホスフィン、亜りん酸トリエチルなども還元剤として利用できます。反応は加熱還流することが多いです。
シュタウディンガー反応: Staudinger Reaction
金属還元
亜鉛や鉄、インジウムなどを使ってアジドを還元できます。酢酸などの酸を使いますが、酸性を避けたい場合はNH4Clを使うこともできます。
アジド体(0.30 mmol)のエタノール10mL溶液に水3.2mLに溶解したNH4Cl 65mg(1.2mmol)および亜鉛39mg(0.7mmol)を加え、混合物を50℃で5時間加熱した。室温に冷却し、濾過、濃縮し、Na2CO3でpH10にしてジクロロメタンで抽出し、カラム精製により目的物を100%で得た。
亜鉛以外も同様の条件で鉄も使えます。
還元方法の選択は、還元される官能基がアジドくらいしかない場合は接触還元が簡便だと思います。不飽和結合がある場合はNaBH4やシュタウディンガー反応を使います。
いつも大変参考にさせていただいています。
失礼ですが、こちらのページ、シュタウディンガーの箇所の反応式が左右で同じになっていませんでしょうか・・・。
いつもご覧いただきありがとうございます。
これでは未反応ですね!修正しました。
今後も何かおかしなところがあればご指摘くださるとありがたいです。