オゾン酸化はオゾンがアルケンやアルキン、アゾなどの多重結合に対して付加し、アルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、スルホキシドなど様々な酸化物を生じる反応です。
ここでは二重結合のオゾン酸化の還元的開裂について紹介します。
二重結合のオゾン酸化によってケトンとアルデヒドを得る方法
オゾン酸化はO3の構造をもつ化合物です。最近はほとんど見かけませんが、昔の真空管を使ったテレビではテレビの裏側付近からオゾン臭が発生していましたね。
オゾンは非常に強い酸化力を持っていて、1,3-双極子であるため、多重結合に対して1,3-双極子付加環化反応を繰り返してトリオキソラン(オゾニド)を生成します(下図)。
トリオキソランは開裂の仕方によって生成物が変化します。
- 還元的に開裂 → アルデヒドやケトン
- 酸化的に開裂 → カルボン酸
オゾンの還元的開裂の特徴や条件
オゾン酸化は二重結合に対してオゾンが付加環化、開裂によって、アルデヒド・ケトンが生成する反応です。
4置換オレフィンでは2つのケトンが、3置換オレフィンはケトンとアルデヒドが生じます。
オゾン酸化は-78℃でも素早く進行します。
多くの多重結合と反応してしまうので気をつけます(オキシム、イミン、アゾなど)。スルフィドはスルホキシドに変換されます。
ヒドリド還元剤(NaBH4等)を加えると還元されてアルコールが生成します。
Boc基、ベンジル基、Fmoc基、TBS基、アセタール、アミド、ラクタム、エステル、ニトロ、ケトン、アリールハライド、
反応条件
還元剤としてはジメチルスルフィド(Me2S)が最もよく利用されていると思います。トリフェニルホスフィンも使われることが多い還元剤です。
溶媒はジクロロメタン、メタノールを使います。
反応例1 ジメチルスルフィドを還元剤として使用
オゾンを基質(40 g、294ミリモル)のメタノール(70 mL)溶液に-78℃で通気し、3時間後、O2を溶液に30分間バブリングさせ、ジメチルスルフィド(37 mL、504ミリモル)を加えて室温まで温め、さらに12時間攪拌した。ジクロロメタンで分液し、クルードをカラムクロマトグラフィーで精製して目的物を96%で得た。
反応例2 トリフェニルホスフィンを還元剤として使用
アルケン(2.31 g、5.29 mmol、100 mol%)DCM(88.2 mL、0.06 M)を-78℃で加えて -78℃で約15分間オゾンを溶液に吹き込んだ。反応後アルゴンを溶液にバブリングしてオゾンを除去した後、-78℃でPPh3(4170.3 mg、15.9 mmol、300 mol%)を溶液に加え徐々に室温まで温め、一晩撹拌した。溶液を濃縮し、カラム精製により目的物を83%で得た。
オゾン分解にトリエチルアミンを使用することもできます。以下の論文の報告では悪臭のあるジメチルスルフィドよりもトリエチルアミンを使用したほうが収率が向上し、更に反応も早く進行したとあります。
Hon, Yung-Son, Sheng-Wun Lin, and Yao-Jung Chen. “A convenient and efficient workup of ozonolysis reactions using triethylamine.” Synthetic communications 23.11 (1993): 1543-1553.