オープンアクセスジャーナルは購読料無しに閲覧できる学術雑誌のことです。
最近は電子ジャーナルの雑誌購読料高騰の問題で海外有名大学が某大手出版社の購読契約を取りやめたり、資金力のない大学が最新論文にアクセスできないことによる情報格差などの問題が取りざたされています。
こうした動きを経て「unpaywall」という無料で読める学術雑誌を検索できるシステムが登場したり、空気を読んでか、危機感を感じてなのか各出版社からオープンアクセス雑誌が続々と登場しています。
オープンアクセスは無償で利用できるがゆえに信頼性の面で不安があります。そこで影響力のあるオープンアクセスジャーナルのランキングをアイゲンファクター (EF)という論文評価指標を使って紹介していきたいと思います。
H指数 (H-index)とインパクトファクター(IF) アイゲンファクター (EF)の違い
影響力のあるオープンアクセス雑誌のランキング
オープンアクセス雑誌は無料で読むことができる論文雑誌です。オープンアクセスは高い購読料を払わずとも研究情報が入手できるという価値があります。
こめやん
オープンアクセス雑誌は無料で読めますが、その分信頼性などに不安があるのも事実であり、影響力の高い論文の多くは有償の雑誌です。
そこでアイゲンファクター(EF)という評価指標(インパクトファクターが上がりやすい弱小雑誌のランクが修正されている)をもとにオープンアクセス雑誌で影響力の高い論文誌のランキングを作成しました。
生の最新研究情報を手に入れたい研究機関に所属していない人たちなど、オープンアクセスジャーナル利用を考える人の一つの指標になれば良いです。
第1位 PLos One (EF:1.71、IF:2.78)
影響力が大きそうなオープンアクセスジャーナルは?と聞かれたらPLos Oneと答える人は多いのではないのでしょうか?
PLos Oneは査読付きのオープンアクセスジャーナルで生物系、医学系(基礎系)では有力な雑誌だと思います。PLOS oneは科学全般の論文を受け付け、さらに研究のインパクトよりも実験方法と結果、考察の妥当性を重視・評価することによって査読を簡略化している点が特徴です。
オープンアクセスジャーナルは購読料を支払えば採択される 「金で解決する」というような印象を持たれて「ハゲタカ雑誌」と揶揄されることも多いです。
実際にPLOS ONEに対して、科学ジャーナリスト John Bohanonらが論文としては不完全ばフェイク論文を投稿して査読が機能しているかどうか調査した結果、フェイク論文はリジェクトされており、査読がきちんと機能しているようだという結果が得られています。
PLOS ONEは論文投稿数も多くオープンアクセスジャーナル界での存在感はとても大きいです。
第2位 Nature Communications (EF: 1.10, IF: 11.9)
やはりネイチャーのブランド力は大きいですね。
Nature Communicationsは最高峰の論文雑誌Natureを出版しているNature publishingが提供している自然科学分野の査読付きオープンアクセス総合雑誌です。
名前にコミュニケーションが入っているので、速報論文専門雑誌かと思われることが多いですが、フルペーパーもあります。
有料雑誌を提供する出版社によるオープンアクセス雑誌のなかでは一番の存在感を放っていると思います。
同じNature Publishingが提供している「Scientific Reports」と比べると研究の新規性やインパクトなど質的な評価が厳しくなっています。
掲載料も$5380とかなり高額となっています。
第3位 Scientific Reports (IF: 4.01, EF: 1.10)
Scientific Reportsもまた、ネイチャーパブリッシングより提供される査読付きのオープンアクセス雑誌です。
Nature communicationと似ていますが、Scientific Reportsでは出版までのスピードが早く、研究の新規性や影響力などは採択に影響を受けにくく、実験やデータの健全さなどを重視しています。否定的な結果が得られた研究や進展が難しい研究の投稿も受け付けているようです。
個人的には結構面白い論文が多いように感じます。掲載料はNautre Communicationsよりも安い$1,790です。
第4位 Nucleic Acids Research (IF: 11.15, EF: 0.40)
Nucleic Acids Researchは分子生物学・核酸系の論文を主に取り扱う査読付きのオープンアクセス雑誌です。
分子生物学に関連する人であれば知らない人はいない有名な雑誌です。オープンアクセスですが情報の信頼性は高い印象があります。
インパクトファクターも高いですね。
第5位 RSC Advances (IF: 3.05, EF: 0.32)
RSC Advancesは王立化学会によって発行されている化学系の査読付きオープンアクセス雑誌です。
最近(2011年)できた雑誌なのでピンとこない人もいるかも知れません。RSC Advanceは出版頻度の高い化学系の雑誌でした。オープンアクセス化は2016年から行われてからはボリュームが小さくなっています。オープンアクセス化が最近のためランキングは高めにでているといえます、今後の質の維持に注目があつまっています。
こめやん
第6位 eLife (IF: 7.55, EF: 0.26)
eLifeは2012年に設立された生物・医学系の査読付きオープンアクセス雑誌です。独立系のオープンアクセス雑誌では有名です。
論文掲載料は2017年から2500$かかるようになりました。
第7位 Cell Reports (IF 7.82, EF:0.24)
大手出版社エルゼビアのCell Pressが発行した最初の査読付きのオープンアクセス雑誌です。生命科学系の雑誌で2012年から発行されています。
第8位 Optics Express (IF 3.56, EF 0.173)
アメリカ光学会が発行する光学・光科学系の査読付きのオープンアクセス雑誌です。
光学系では有名な雑誌の一つです。
第9位 PLoS Genetics (IF 5.22, EF 0.143)
2005年に設立されたPLoS系の査読付きオープンアクセス雑誌です。ゲノム系に関する論文を取り扱っています。
第10位 Journal of High Energy Physics (IF 5.83, EF 0.143)
高エネルギー物理学系の論文を取り扱うオープンアクセス雑誌です。
10位以降のランキング
Rank | Jounal title | IF | EF |
11 | JOURNAL OF HIGH ENERGY PHYSICS | 5.83 | 0.14 |
12 | Chemical Science | 9.56 | 0.13 |
13 | PLoS Pathogens | 6.46 | 0.12 |
14 | Frontiers in Microbiology | 4.26 | 0.12 |
15 | INTERNATIONAL JOURNAL OF MOLECULAR SCIENCES | 4.18 | 0.11 |
16 | Science Advances | 12.80 | 0.11 |
17 | Biomed Research International | 2.20 | 0.11 |
18 | BMJ Open | 2.38 | 0.11 |
19 | Frontiers in Plant Science | 4.11 | 0.10 |
です。EFが同じなところがありますが、丸めているので差はあります。
以上、知っているオープンアクセス雑誌はあったでしょうか?今回はアイゲンファクターという指標をもとにランキングを作成しているので、分野間で格差が出てしまっているかもしれません。
今後は分野ごとのランキングや他の指標(H-indexなど)を使ってランキングを作成してみます。
良く討論されているオープンアクセス論文の実質的な信頼性については自身で判断するというのが前提になるのでしょうかね.