硝酸の反応といえばニトロ化ですが、酸化剤としても機能し、各種アルコールをカルボン酸に変換可能です。
本記事では硝酸による酸化反応としてカルボン酸の合成に着目して紹介していきます。
硝酸酸化でアルコールをカルボン酸に!
硝酸はニトロ化が代表的な利用例です。
一方で、硝酸は酸化性を持つため、アルコール等と反応してカルボン酸を生成します。
こうした硝酸による酸化反応はニトロ化時においては避けたい副反応ですが、意外に選択性が高く、簡便なため工業用途では利用されています。
アルコールの酸化反応はベンジルアルコール>第二級アルコール>第一級アルコールの順の反応性です。
硝酸によるアルコールの酸化はニトロ化、アルデヒドをともなういカルボン酸まで酸化させます。
Kurt Field W.,et al, J. Chem.Educ. 1985, 62, 7, 637
芳香環メチルの酸化はC-H引き抜きによって起こり、置換基としてブロモやクロロが存在すると酸化反応が進行しやすいことが報告されています。
シクロヘキサノールの酸化はケトンを経由し、ケトンα位のニトロ化と酸化的開裂が起きてアジピン酸になります。
硝酸酸化のメカニズムははっきりとはわかっていません。
アルコールの酸化
第一級アルコールは対応するカルボン酸に変換されます。一方第二級アルコールはケトンを生成し、開裂が起こる場合があります。
硝酸酸化のデメリットは
- 酸に弱い基質は使えない
- 硝酸と生成物の分離
- 硝酸を使うこと
があります。条件を上手く設定しないと副反応が起こります。
第一級アルコールの酸化は70~85%濃度の硝酸を25~30℃で反応させるのが有用です。アルコール添加時は冷却すると副反応を抑えられます。
反応条件
硝酸の量は5当量でアルコール1当量を滴下して加えます。反応は25℃~30℃に維持してこれを超えないように冷却する必要があります。発熱と共に茶色の酸化窒素が生じることがあります。これを30℃で3~4時間撹拌し、冷水に注ぎ、クロロホルムで抽出、得られたカルボン酸を蒸留やカラムで精製します。単純アルコールの場合、収率は8~9割で得られます。