大腸菌などの細菌培養は生物系の研究ではよく行います。
細菌を増やすには「培地」が必要です。培地は植物でいえば「土」のようなものです。
培地の中でも有名な培地である「LB培地」について紹介していきます。
目次
LB培地とは?
細菌培養は生物系の研究では基礎的な実験の一つです。
細菌といってもたくさんの種類がありますが、その中でも「大腸菌」は多くの人が培養したことのある細菌だと思います。
大腸菌(Escherichia : E. coli )は組み換えたんぱく質や組み換えDNAを調製するのに有用です。
この大腸菌を培養するのに適した培地が「LB培地」です。
LB培地の作り方
LB培地の組成は若干異なる部分があるので、自分の研究に近い論文などを参照しましょう。
液体培地として利用してもよいですし、寒天を加えて固体培地にしても良いです。
最も簡単な方法は「粉末培地」を利用する方法です。
粉末培地はLB培地に必要な塩やトリプトンなどがミックスされた粉末で蒸留水を加えて溶かすだけで簡単に調製できます。
レシピ(1L分)
- トリプトン 10 g [1%]
- 酵母エキス 5 g [0.5%]
- 塩化ナトリウム 10 g [1%]
三角フラスコ等に加えた上記の固体に800~900 mLの蒸留水(純水、脱イオン水etc)を加えて溶解します。
メスシリンダーに移して蒸留水を加えて1000 mLにメスアップします。
121℃ / 15 – 20 minオートクレーブします。冷却後LB培地として利用する。
塩化ナトリウムの濃度は浸透圧を変化させるため、細菌の種類によって好ましい条件を利用します。
よくある処方としては
- LB – Miler 10 g
- LB – Lennox 5 g
- LB- Luria 0.5 g
があります。
基本的にMilerでよいですが、低塩条件を要求する抗生物質(ゼオシン:zeocin, ブラストサイジン:Blasticidin、ピューロマイシン:Puromycin)ではLennoxやLuriaを使います。抗生物質は耐性による使い分けが必要です(アンピシリン、カナマイシン、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール等)。アンピシリンなら100 mgくらい入れます。抗生物質を加える時は60℃くらいまで冷やしてから加えないと分解してしまうことがあるので注意が必要です。
pH調製はあまり必要ないですが、NaOHを使ってpHを7付近に調製することがあります。緩衝能を求めてトリスバッファーで調製することもありますがあまり意味がないようです。
LB固体培地の作り方
固体培地は寒天を加えて作ります。
- 寒天は1.5%濃度で加える
- オートクレーブをする(121℃ / 20 min)
- 抗生物質が必要な場合は60℃まで冷却した後にクリーンベンチ内で加える
- シャーレに分注する(10~20 mLくらい)
- 室温で固化させる
- 上蓋を下向きにひっくり返して4℃で保存
寒天培地はシャーレに分注する間に固まることがあるので保温しながら素早くやりましょう。
寒天培地は4℃で保存することが可能ですが、作った後はできるだけ速やかに使用します。
寒天培地をひっくり返して保存する理由は水滴が培地表面に落下するのを防いで汚染を防ぐためです。
よくある疑問
LB培地が黄色や緑に変色する?
粉末LB培地には指示薬としてブロモチモールブルー(BTB)が含まれていることがあります。BTBはpH指示薬で中性付近で緑色、酸性で黄色を呈色します。
トリプトン(bacto tryptone)とは?
トリプトンはカゼインのトリプシン消化物です。