ベンゼンの形は一体どうなっているのか?
今では当たり前のように6角形で描かれたベンゼン環ですが、昔はそうではありませんでした。
ベンゼンが持つ二重結合は他の二重結合の分子とは性質が異なるからです。
ケクレが提唱したベンゼン環は今のものと近しいものです。今回はケクレ構造について紹介します。
ケクレ構造 – ベンゼン環はどんな形をしているのか?
ベンゼン環は炭素6個、水素6個の単純な構造をした分子です。どうやら炭素と水素の比は1:1であり、アルケンのように付加反応により異性体が生じないということが分かっていましたが、当時はこのベンゼンがどういった構造をしているのか?は不明でした。
3つの二重結合を持つと考えてもアルケンのように臭素と簡単に付加反応を起こさない安定性の高さも化学者の頭を悩ませました。
現在のベンゼンに近い構造は1872年にケクレによって発表されました。ケクレは「二重結合を3つもつ正六角形のベンゼン」ケクレ構造を発表しています。ベンゼンの二重結合は素早く入れ替わっていると考えていました。
構造決定としてよく使われるX線回折法がありますが、ベンゼンのようにベンゼン同士が重なるような分子間相互作用が大きい分子では正しい形を見ることが難しく、分子を引き離すために気体の状態で測定する気体電子回折法を用いてポーリングらが1943年に構造決定しました。
中田宗隆. “ベンゼンの形: ケクレ構造とデュワー構造 (トピックス, あんてな).” 化学と教育 42.2 (1994): 118-120.
ケクレ構造式
ケクレ構造式は構造式の書き方の一つです。シンプルな書き方なので、大学以降ではケクレ構造式で化学構造を表記することが多いです。
ケクレ構造式は水素を省略し、炭素も記入しません。またローンペアの電子も記入しません。これにより簡単に素早く化学構造式を記入することができるようになります。
ケクレ構造式では、アルカンはジグザグに記入します。三重結合は直線的に記入します。
炭素は先端や折れ曲がりの部分にあると考えます。また、化合物の構造情報を反映させます。二重結合の置換基の位置には意味があります(cis, trans)。二重結合の角度は120°になるように書きます。また三重結合は直線構造を持つため、直線に書きます。