研究に関連した仕事しているひとなら、一度はインパクトファクターという言葉を聞いたことがあると思います。インパクトファクターは本来想定している使い方とは別の使い方がされていることが多いことからよく問題になっていますね。
よくある誤解は、インパクトファクターは論文誌の評価であって、そこに投稿される論文の質、研究者を評価するものではないということです。じゃあ研究者の評価指標はないのか?というと実はあります。今回は、インパクトファクター以外の評価指標について取り上げたいと思います。
インパクトファクター以外の指標って?
インパクトファクターは有名ですが、それ以外の指標を知っているか?と聞かれるとすぐに出てこないのでは無いのでしょうか?
インパクトファクター以外の指標は以下のものがあります。
Eligen Factor(EF)
H-index
Article Influence(AI)
Scimago journal rank (SJR)
Source normalized impact per paper(SNIP)
Impact factor (IF): インパクトファクター
インパクトファクターはジャーナルの影響度の評価指標として使われます。IFが高いジャーナルの論文はたくさん引用されているということです。インパクトファクターは一年ごとに出されます。(2018年のインパクトファクター)
たとえば、2018年naureのIFは
2018年に掲載された全雑誌論文が2016年~2017年の間にnatureに掲載した論文を引用した回数 ÷ 2016年~2017年の間にnature誌が掲載したすべての引用可能な論文数
で算出されます。1年間のnatureを引用した総数/nature論文総数って言う感じですね。
インパクトファクターは一年間で大きく値が変化します。そこで、その期間を1年ではなく5年とかに増やしたIFもあります。
インパクトファクターの注意点は
1.年ごとに大きく値が変化する
2.学問領域によって変化する(広い学問領域のほうが高いIFになる:医学等)
3.IFは単純な式ゆえに操作可能(レビュー誌を増やすなど)
Eigen Factor(EF) :アイゲンファクター
2009年に新たに提供されたEigen FactorはImpactFactorと同様に、学術誌の影響力を評価する指標です。EigenFactorの特徴は引用に重み付けを行う点です。
Impactfactor は引用数÷発表数で算出されるため、発表数の少ないマイナー雑誌の過大評価が問題でした。EigenFactorはnatureやscienceといった一流雑誌からの引用を高く評価し、国内雑誌等の発表論文数が少ないマイナー雑誌からの引用は低く評価することによって、マイナー雑誌を適正に評価しています。算出計算式については以下のURLに簡単な説明があります。
https://the.nacos.com/pdf/abouteigen.pdf
わかりにくいですが、EFは「ある雑誌からランダムに引用を辿り続けたときにその雑誌がどれだけ読まれるかを示した指標であるといえる」そうです。わかりにくいですが、
高く重み付けされるのは、1.たくさんの種類の雑誌から引用されている雑誌からの引用。と2.少ない種類の雑誌を引用する雑誌からの引用です
雑誌を友達で例えると、影響力のある友達として評価するには、たくさんの友達がいる人または、友達がめちゃくちゃ少ない人と友達だった場合に友達ランクが高くなるってことですかね?そう言う人はランダムに友達辿ったときに、その人に行き着く場合が増える?ってことですかね。
Eigen Factorはこちらから調べられます。
H-index
H-indexは2005年にカリフォルニア大学の物理学者George E. Hirschが発表した研究者の生産性と論文の質を同時に評価できる指標です。HはHirschの頭文字から来ているっぽいです。
H-indexの利点は、たまたま被引用数が多かった一つの当たり論文を出した研究者を評価しにくくなっていて、そこそこの被引用数がある論文を堅実に出している研究者を評価する点です。短所としては論文数が多い、重鎮の研究者のほうが有利になる点です。H-indexはジャーナルのスコアと研究者のスコアの両方を確認できます。研究者の指標を確認できる数少ない指標の一つですね。
研究者のH-indexを調べる場合は、エルゼビアのScopusが無料で使えて便利です。
ジャーナルのH-indexはSJRからも確認できます。
Airticle Influenece (AI)
Article InfluenceはEigen Factorを(全体の雑誌の論文数)に対する(該当雑誌の掲載位論文数)が占める割合で割ったものです。
Scimago journal rank (SJR)
SJRはEFと同様に有力雑誌からの引用は、より高い重み付けを行います。EFとの違いは重み付けを行うアルゴリズムが違い(googleのPageRnakのアルゴリズムに似ている)、該当年の過去3年間に出版された総引用回数を使って計算する点です。EFの場合は過去5年間のデータを使ってます。そのため、EFよりもSJRのほうがリアルタイム性が高いと言えるでしょう。SJRのランクが高い雑誌は有力紙(Nature, celltなど)からの引用を受けやすいことを意味しています。以下のURLから無料でランクを確認できます。
SJRのランクを見ると高ランクの雑誌はレビュー誌が多くランクしています。レビュー雑誌は高く出る傾向があるので実用性はどうなんでしょうか?
Source normalized impact per paper(SNIP)
SNIPはIFで問題となる、分野によるIFのばらつきを抑えて、分野間でも比較が行えるように算出されているジャーナルの指標です。異なる分野間で比較したい場合にはIFよりも信頼性が高いとされています。
分野によって、発表されている論文の数や論文あたりの被引用数は異なります。例えば臨床医学の2010-2014年の論文数は約126万本を超えますが、宇宙科学は約6万8千本、微生物学は約9万7千本と差が大きいです。論文数あたりの被引用数も生物系の雑誌、分子生物学や遺伝学では約15.6回ですが、数学は約2.7回、情報科学は約4.9回と差が大きいです。このような分野間の差がある中で、被引用数の数だけで評価すると分野間の格差が生まれてしまうため、分野間の引用のされやすさを補正(正規化?)することによって分野間の格差を減じた評価指標です。
SNIPはエルゼビアのScopusから調べることができます。
https://www.scopus.com/sources
分野間を比較する時には使えるかもしれません。どのように補正しているかについては記載がありませんでした。
まとめ
結局どの指標見たってその分野のトップジャーナルの順位はそんなに変わらないようです。そこそこの論文誌とか、規模の小さい雑誌に関しては変わるので、そのような雑誌を比較したいときは他の指標をみると良いと思います。
IFは昔から使っている指標で、式も簡単なので理解しやすいですが、問題も多くあるので、EFやH-index、SJRなど新しい指標が考案されています。こっちの方が最新で良さそうですが、計算が複雑でその値が一体何を反映しているのかが直感ではわかりにくい点が欠点かもしれません。いろんな値を見比べてみるのがよいのでしょうか?
分野間で比較したい時はSNIPを見てみたり使い分けもしていきたいところです。