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寒剤の作り方 ドライアイス アセトンで -78℃を作ろう

寒剤の作り方

寒剤とは?

寒剤は有機化学反応で低温条件が必要な時に利用する冷却材のことです。

0℃であれば氷を使いますが、-78℃や-15℃などより低い温度を調製・維持するには二種類以上の物質を混合させて作ります。

有名な組み合わせは「氷+塩化ナトリウム(食塩)」です。

氷だけでは0℃ですが、ここに塩化ナトリウム(約質量20%)を加えると-20℃くらいまで冷却できます。

なぜ二種類以上の物質を混合させると温度が低下するのか?

 

氷は0℃で溶けて水になりますが、この時の氷と水の状態は氷から水と水から氷になる分子の数は等しくなっています(平衡状態)。しかし、ここに食塩が加わるとNaイオンやClイオンが液体の水分子と水和します。そうなると平衡状態が崩れて氷から液体になる分子が増える→どんどん氷が溶けるようになります。0℃で冷却しても氷になれないのでより低い温度が必要になります。これが凝固点降下です。氷に食塩をかけるとー20℃くらいまで冷えます。

また、氷は熱を吸収して液体に状態変化します。この時に必要な熱が融解熱といいます。氷の融解熱は333.6 KJ / kgです。0℃で溶ける氷に食塩をかけると氷が溶けるようになりますから、氷が溶ける時に周りから熱を吸収することになります。融解熱によって食塩氷水は凍るぎりぎりの温度-20℃まで冷却していきます。これが寒剤の原理です。まとめると、氷が溶ける時に周りから熱を奪いますが、食塩は熱を与えなくても氷を溶かすことができるのでどんどん冷却していき、食塩水が凍るー20℃くらいまで冷却していきます。



代表的な寒剤

様々な寒剤が知られていますが、組み合わせは、「氷やドライアイスのようなそもそも冷えている物質」+「塩とか溶媒」です。

有機化学実験などでよく使われて実用的なものを中心に紹介していきます。ドライアイスが中心なのは保ちやすいからです。

寒剤温度特徴
0℃用意しやすい・大量
氷+食塩(20%)-15℃~-20℃簡単だが温度を保ちにくい
ドライアイス+エチレングリコール-15℃温度を保ちやすい
ドライアイス+四塩化炭素-20℃簡単・温度を保ちやすい、体に悪い
ドライアイス+アセトニトリル-42℃簡単・温度を保ちやすい
ドライアイス+クロロホルム-63℃簡単・温度を保ちやすい
ドライアイス+エタノール-72℃温度を保ちやすい・安全
ドライアイス+アセトン-78℃簡単・温度を保ちやすい
液体窒素+メタノール-98℃温度を保ちにくい・用意しにくい
液体窒素-180℃簡単

冷却物質にはドライアイス液体窒素があります。

それぞれ特徴があり

  • 氷は最も入手しやすく安価で大量に使えるのがメリットですが、溶けやすく長時間の実験に不向きで、温度制御も難しい欠点があります。
  • ドライアイスは温度制御が容易で長時間持つメリットがありますが、入手しにくいのが欠点です。-78℃くらいまで作れます
  • 液体窒素は最も低い温度を実現できますが、寒剤として利用する場合はもちが悪いのがデメリットです。

基本的にはドライアイス、氷を使うことが多いです。

寒剤によっては凍ることもあるので注意です。

化学系の研究室では大体の材料をそろえることができると思います。用意しやすい寒剤としては氷+食塩(-15℃)やドライアイス+エタノール(-72℃)があります。また、メタノール+水やエタノール+エエチレングリコールの比率を変えることで様々な温度のアイスバスを作ることができます。

寒剤を使う注意

どんな容器を使う?

寒剤を作るときは、低温条件がきちんと保てるようにデュワー瓶などを使います。ガラス製?のものがもちが良いです。金属製の魔法瓶タイプでも大丈夫です。寒剤によってはプラスチックやガラスを使うと低温に耐えられずにひびが入ったり破損したりするので気をつけましょう。

温度計で測定しよう!

寒剤の温度は温度計を使ってしっかり計測します。また、反応の温度はアイスバスの温度というよりもフラスコ内の温度です。低温反応を行うときはきちんと内部温度も測定して所定の温度を超えないように、特に反応剤を加える際はゆっくりと内壁を伝うようにして反応を行いましょう。

フラスコはしっかりと浸ける

加熱還流の時とは違って冷却するときは、フラスコをなるべくすっぽりと浸けさせたほうがきちんと冷却できて良いです。半身浴よりも肩までつかる感じです。

寒剤は直接手で触れない!

寒剤を使うときは低温やけどに注意しましょう。氷を使った冷却剤はまだ到達温度がそこまで低くないので安全ですが、ドライアイスや液体窒素を使用するときは保護手袋などをつけるなどして、素手で直接寒剤に触れないように気を付けましょう。

液体窒素を使うときは特に換気に注意

液体窒素を使用するときは換気を十分にしましょう。液体窒素から気化する窒素で窒息する恐れがあります。寒剤を作るときは結構な量の液体窒素を消費します。

廃液の処理に注意!

ドライアイスの寒剤を使ったときは使用後の有機溶媒をそのまま廃液に流すと爆発することがあります。アセトン+ドライアイスの寒剤などはよく使うので注意しましょう。原理は不明ですが、おそらくアセトン中に溶けた二酸化炭素が廃液など温かい場所に移動したり刺激などで急激に二酸化炭素が気化されるから?かと思います。


参考

1)Jensen, Craig M., and Do W. Lee. “Dry-ice bath based on ethylene glycol mixtures.” Journal of Chemical Education 77.5 (2000): 629.
2) 柚木. “「寒剤」 に関する一考察.” (2015).
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