電気を通すものは何?と言われれば「金属」がぱっと頭に浮かぶのではないでしょうか?
実際に「金属」は電気を良く通します。しかし、金属の中にも電気を通しやすいものと通しにくいものがあるのです。
電気を通す導線に銅を使っているのにもしっかりとした理由があります。
では一体どのような金属は電気を通しやすいのか?身の回りの金属の鉄やアルミ、ステンレス、10円玉などは電気を通すのかを解説していきます。
電気を通しやすい金属は何?
電気を通しやすい金属は電気抵抗率が小さい自由電子密度が大きい金属です。
電気を通しやすい金属を順番に並べると
- 銀
- 銅
- 金
- アルミニウム
- マグネシウム
の順番になります。最も電気を通しやすい金属は銀です。
周期表で見てみると電気を通しやすい金属TOP3は11族元素です。こうして並べると周期性があるように見えます。
このように全ての金属が同じように電気を通しやすいわけではありません。
金属によって電気を通しやすいものと通しにくいものがあります。
伝導率ランキング | 材料 | 電気抵抗率ρ (Ω・m) 20°C |
---|---|---|
1 | 銀 | 1.59×10-8 |
2 | 銅 | 1.68×10-8 |
3 | 金 | 2.44×10-8 |
4 | アルミニウム | 2.65×10-8 |
5 | カルシウム | 3.36×10-8 |
6 | タングステン | 5.60×10-8 |
7 | 亜鉛 | 5.90×10-8 |
8 | ニッケル | 6.99×10-8 |
9 | リチウム | 9.28×10-8 |
10 | 鉄 | 9.70×10-8 |
11 | プラチナ | 1.06×10-7 |
12 | スズ | 1.09×10-7 |
13 | ガリウム | 1.40×10-7 |
14 | 炭素鋼 | 1.43×10-7 |
15 | 鉛 | 2.20×10-7 |
16 | チタン | 4.20×10-7 |
17 | ステンレス | 6.90×10-7 |
18 | 水銀 | 9.80×10-7 |
19 | ニクロム | 1.10×10-6 |
20 | グラファイト | 2.5×10-6 ~ 5.0×10-6 |
21 | 海水 | 2.0×10-1 |
22 | 飲料水 | 2×10^1 ~ 2×10^3 |
23 | シリコン | 6.4×10^2 |
24 | 空気 | 10^9 ~ 10^15 |
25 | ガラス | 10^11 ~ 10^15 |
26 | ダイアモンド | 10^12 |
27 | 硬質ゴム | 10^13 |
28 | 乾燥木材 | 10^14 ~ 10^16 |
29 | 石英ガラス | 7.5×10^17 |
30 | ポリエチレンテレフタレート(PET) | 10^21 |
31 | テフロン | 10^23 to 10^25 |
Reference “Electrical resistivity and conductivity“, Wikipedia Eng.
導線に銅が使われる理由とは?
導線に銅が使われる理由は「電気通しやすく、安価だから」です。また、融点も高く耐熱性があり、延性があり、化学的安定性も優れていて、人体に対する毒性も高くありません。
確かに、銀は電気を一番通しやすいですが、導線の材料に使用したらものすごく高価になってしまいます。宝飾品としても使われる銀ですからただ電気を通すだけに使うのはもったいないです。
電気抵抗率を比較してみても銀は1.59×10-8に対して、銅は1.68×10-8なので比率にして銅の電気の通しやすさは銀の95%くらいです。電気の通しやすさという観点から見ればあまり変わりませんね。
3位の金も高価ですし、アルミニウムは軽くて安価ですが銀と比べて電気抵抗率は1.67倍であり、銅のほうが優れています。
高圧電線にはアルミニウムが使われている理由
高圧電線でアルミニウムが使われている理由は安価で軽量であるためコスト削減が可能であるからです。
先ほどは電気を通しやすく導線にはよく銅が使われているといいましたが高圧電線のほとんどはアルミニウムが使われています。
アルミニウムはかつてはあまり安くはありませんでしたが、価格が低下し、銅の1/3程度の価格で購入できるようになっています。
欠点としては電気抵抗率が高く銅よりも電気を通しにくい点です。しかし、アルミは軽いことから導線を太くしてもそこまで問題にはなりません。
参考 銅電線が「アルミ」に代わる(日本)【キーワード】/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント三井住友DSアセットマネジメント
電気ストーブやトースターで活躍するニクロム線はなぜ熱くなる?
ニクロム線が発熱するのは、ニッケルとクロムからなる合金で電気を通しますが、抵抗が大きいことが原因です。
実際にニクロムはほかの金属と比べて電気抵抗率が高いです。銀と比べて約70倍も電気抵抗率が高いです。
電気の正体は自由電子ですが、この電子が動きにくい=抵抗が大きいということです。
消しゴムを電子としたときに、油を付けると抵抗がなくなってスムーズに動けるから熱が少ないです。
一方、普通の消しゴムは抵抗があるため、移動するエネルギーが熱に変換されて熱くなります。
鉛筆の芯は電気を通す?
鉛筆の芯の素材であるグラファイトは自由に動く電子を持っているため電気を通します。
鉛筆の芯に使われている黒鉛は別名グラファイトと呼びます。上のランキングにはグラファイトは20位にあります。
金属と比べたら電気を通しにくいですが、ニクロムくらいは電気を通します。
実際に鉛筆の芯を導線として使って豆電球の光を付けることができるくらいの伝導性はあります。
鉛筆の芯のグラファイト(黒鉛)はグラフェンというシート状の化合物が積み重なってできています。グラフェンはベンゼンの集合体であり、自由に動くπ電子を持っています。
一方ダイアモンドは二重結合をもたないので電気を通しにくいです。
10円玉は電気を通す?
10円玉は銅とスズの合金です。青銅(ブロンズ)の電気抵抗率は3.918×10-8ということで上位5位くらいに電気を通します。
したがって、10円玉は結構よく電気を通します。
ステンレスは電気を通す?
ステンレスは電気を通しますが、金属の中では電気を通しにくい素材です。
ステンレスはクロムとニッケルを含む鉄の合金です。さびにくい金属の代名詞ですが、さびにくいと電気を通しにくそうなイメージがありますが、実際にステンレスは金属の中では電気を通しにくいようです。
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