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選択のパラドックス 選択肢が多すぎる問題とは?選択の科学2

選択のパラドックス

行動を決定する際に選択肢は多ければ多いほど良いという印象を抱くことが多いと思いますが、実際は選択肢が広がりすぎると、多すぎると起こる弊害があります。それは「選択のパラドックス」と呼ばれています。

選択肢を広げて良い選択肢を選ぶ方法 選択の科学1

選択肢が多すぎると不幸になる?

人の考えや好みなどは十人十色であり、同じものは無いと思いませんか?

日本でも「ダイバーシティ」という言葉が叫ばれるようになって、人の個性や価値観、多様性について考える機会は多くなったと思います。

食べ物一つとっても好みはたくさんあります。基本的に選択肢が少ないと不自由を感じることが多いです。

イタリアンレストランに行った時「パスタはカルボナーラとボロネーゼのみ」というようなメニューだったらクリームパスタやピザを食べたかった人の希望は叶えられません。

みんなの希望に答え・最大限に希望を満たすなら選択肢はできる限り多い方が好ましいと考えるのが普通だと思います。

しかし、実は多すぎる選択肢は心理的な負担を与えるという研究結果があります。それを「選択のパラドックス」といいます。

選択のパラドックスは多すぎる選択肢が返って人を不幸にさせるというものです。


選択のパラドックスとは?

選択のパラドックスは選択肢が多すぎることがかえって心理的な負担を増やすという心理学的な主張です。

この選択のパラドックスを提唱したのは米国スワースモア大学の心理学者バリー・シュワルツ博士です。

私達は日々たくさんの選択をしています。一日に35000の選択を行っているといわれることもあります。アメリカ人は一日に意識的な選択を70回行っているという調査結果がでています。

これだけたくさんの選択ができるというのは、それだけ行動の自由が与えられているということになります。会社のフレックスタイム制で入社時間、起床時間を自由に決定できる、制服ではなく自由な服装、朝食のサンドイッチに挟む野菜の種類、仕事のキャリアプラン、結婚のパートナー・時期、携帯電話の種類、料金プランありとあらゆるものが自分の裁量で自由に決められるようになっています。それは裏を返せば膨大な選択を強いられる世の中になっています。自由を追求することで選択の爆発が起こっています。

膨大な選択肢を目の前にすると人間はどのように感じるのでしょうか?

選択のパラドックスが人間に与える影響

はじめに断っておくと選択肢が膨大にあるということは良いことです。それだけ多くの要求に答えることができるからです。少なくとも選択肢が少ないよりかは多い方が良いはずです。しかし、良い面だけではないというのが選択のパラドックスの主張する内容です。

膨大な選択肢を目の前にすると人間は「選択するのが困難」になります

選択が困難になると選択するのを放棄してしまう傾向があります。

つまり膨大な選択肢を目の前にすると選択するのをやめてしまうのです。

これは商品販売で実証されています。例えば、なるべく多くの人のニーズに答えるために用意した保険プラン、パソコンのカスタマイズなどです。膨大な選択肢を用意しすぎると客はどれを選択が難しくなり、標準的な選択を選ぶ他、ついには選択をやめてしまうという人も現れます。実際に選択肢を増やした時と減らしたときとでは選択肢がシンプルなほうが売上が高いという結果が得られています。

実際にスーパーマーケットでワインを買おうとした時、膨大な種類のワインがでてくるとどのワインを選べばよいかわからなくなりますよね?赤か白か、イタリアかフランスかなど決めるのが難しいと感じたことはありませんか?

さらに選択のパラドックスでは、膨大な選択肢から選択したときの満足度は少ない選択肢から選んだ時と比べて満足度が低下する傾向があります。

たくさんの選択肢がある時は一つ一つの選択肢に対して考えることで多くの時間を費やすため、少ない選択肢の時よりも満足感を得やすい気がしますが、実際はその逆のようです。選択肢が多いと自分の選択に自信を得にくく、得られた結果があまり満足のいくものでないと、他を選んだほうがもっと良い結果が得られたのではないか?というような後悔を抱くからだと説明されています。また、選択肢が膨大になるとこれだけたくさん選択したのだからより良い結果が得られるだろうという期待が生まれます。この期待値の高さが満足度を低下させる一因になります。

膨大な選択肢からの選択は後悔しやすいということです。

これが選択のパラドックスです。

人間は膨大な選択肢を目の前にすると

  1. 選択をやめてしまう
  2. 選択した満足度が低下する

ということが起こります。

ジャムの法則も選択のパラドックス

ジャムの法則はコロンビア大学のシーナ・アイエンガー博士によるジャムの売上と選択肢の数を調査した結果導き出された法則です。

この背後には選択のパラドックスがあります。

ジャムの法則ではジャムの試食コーナーで6種類の試食コーナーと24種類の試食コーナーの二種類を用意した時、試食をしてくれたお客さんがジャムを購入する割合はどちらが高いか?ということを調べた研究です。

その結果、少ない選択肢だったほうが試食したうちの3割が購入し、約10倍も購入割合が高かったという研究結果が出ています。


選択のパラドックスが必ずしも当てはまらない場合

膨大な選択肢を目の前にして「うわー」と臆する場合と「おー!」とワクワクする場合の二種類のパターンがあることを体験したことはありませんか?

選択肢が多いことで嫌になってしまう要因としてその選択にかける思い、主体性やモチベーションの低さが挙げられます。

正直どうでも良いような選択肢、興味のないことの細かい選択は面倒に感じるはずですが、興味のあることはもっと細かく決めたいという経験があるはずです。

洋服に興味ある人であれば、全体のデザインは気に入っているけど丈が長すぎるとか、こっちの生地が良いとか、ボタンの位置や種類などが気になったりします。もしもそれが希望通りに選べたら良いのにと思うこともあるでしょう。一方で興味のない人であればサイズだけ合ってればOKなどのように他の選択などは興味無いし、選べと言われたら面倒に感じるはずです。

パソコンのカスタマイズもよくわからない人にとってはなるべく軽いのが良いとかそういったことくらいの選択肢で、CPUやGPU、メモリ容量などはどうでも良かったりするはずです。

つまり選択肢が多くても、選択に関する知識や経験があれば一度に処理できる選択肢の数が多くなります。どの選択肢が自分にとって適しているからを理解しているので無駄に期待値が上がったり、選択による後悔などは現れなくなります。むしろ選択肢が多いほうが良いと感じるます。

シーナ・アイエンガー博士はこの膨大な選択問題をうまく回避するための方法を提案しています。これについては別の記事でとりあげます。

選択肢を広げて良い選択肢を選ぶ方法 選択の科学1

参考文献

1) Schwartz, Barry. “The paradox of choice: Why more is less.” New York: Ecco, 2004.

バリー・シュワルツによる公演(TED TALKS)

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