生活

将来、感染症治療のためにアリを飼う日が来るかもしれないーアリの抗生物質

アリが抗生物質を作る?

抗生物質は人間を脅かす細菌や菌類を殺す薬物です。抗生物質は多くの命を救ってきた薬品ですが、世界中で広がる医薬品の使用・濫用によって薬物耐性の細菌類が現れてきているため、これらの微生物に対抗する新薬が求められています。そんな希望の光の一つが「アリ」です。この恐ろしく小さな生き物の分泌物の中にいくつもの抗菌成分が見つかりました。これは将来感染症治療のためにアリを飼育する未来の始まりを表しているかもしれません。

アリ分泌する新しい抗菌薬の発見!

「アリが新規の抗菌薬をいくつも分泌する」身近に存在するアリが人間の命を救うかもしれないー そんな驚愕の事実を発見したのが、ノースカロライナ州立大学の生物科学者のAdrian A. Smithたちの研究グループです。論文は2018年2月に THE ROYAL SOCIETYのオープンアクセスジャーナルの ROYAL SOCIETY OPEN SCIENCEに投稿されました。https://doi.org/10.1098/rsos.171332

Penick, C. A., Halawani, O., Pearson, B., Mathews, S., López-Uribe, M. M., Dunn, R. R., & Smith, A. A. (2018). External immunity in ant societies: sociality and colony size do not predict investment in antimicrobials. Royal Society open science, 5(2), 171332.

アリは常に伝染病の危機にさらされている

アリは社会性の高い昆虫の一つで、一つの巣に大勢のアリが密集してくらしています。アリは昆虫ですが人間と同様に細菌や菌類に感染し、病気になります。アリのように集団生活を基本としている生き物はたった一匹の感染であっても瞬く間に仲間に伝染していきます

学校でのインフルエンザの流行と同じですね!

そのためアリのような集団で生活するような生き物は病気の拡大を防ぐような仕組みを備えている可能性が高いと考えられていました。例えば、ハチは種によって社会性の高いハチと単独行動するハチがいます。これらのハチの分泌物中の抗菌性物質を比較すると社会性の高いハチのほうが強力な抗菌性物質を分泌する割合が高かったという報告があります1)。アリはハチの近縁種であることから、アリも同様に抗菌性物質を分泌している可能性があると考えられ、これまでにいくつかのアリが細菌や菌類に対する抗菌性物質を分泌することがすでに報告されています。しかし、アリの社会性と抗菌物質の分泌量の違いといった視点での研究はなされておらず、より多くの種でそもそも抗菌性物質が分泌されているかどうかについてもテストする必要がありました。

ノースカロライナ州立大学のAdrianらはこれらを踏まえて

  1. ほとんど全ての種のアリは抗菌性物質を分泌するのではないか?
  2. 巣の大きさ(集団の大きさ)によって抗菌性物質の分泌量は変化するのではないか?

という仮説の元にこれまで注目されていなかった、社会性と感染症予防機構としての抗菌性物質分泌をより多くの種のアリを使って実証研究をおこないました。

調査した40%の種には抗菌性物質が見つからなかった

彼らは、20種類のアリを抽出して、それらが分泌する分泌物中にStaphylococcus epidermidis(表皮ブドウ球菌)に対する増殖阻害活性のある物質が存在するかどうか調べました。

その結果、調査したアリの種のうち60%の種に関しては、細菌に対する増殖阻害を示す物質が見つかったが、40%の種に関しては抗菌性物質が見つかりませんでした。これは、半分程度のアリは抗菌性物質の分泌に頼らない方法で感染症に対する防御機構を備えているということの証拠でもあると考えているようです。

アリの大きさと抗菌活性の相関も見られませんでした。

コロニーサイズと抗菌性物質の分泌量などに相関はなかった

アリは大きなサイズの集団生活を営むものやコンパクトな集団生活を好むものなど、種によって変化します。コロニーサイズが大きいものほど伝染に関するリスクにさらされる危険性が高いと考えられるため、より大きなコロニーサイズを持つ種が強い抗菌活性を持つものが多いと予想しましたが、実際はコロニーサイズと抗菌活性との相関はありませんでした。むしろ最も抗菌活性が高かった種は最も体とコロニーサイズが小さいものでした。

まとめ

社会性の高い種であるアリやハチなどは確かに抗菌性の物質を分泌しているものが多いですが、予想とは反して今回調査したアリの半数程度種は抗菌性物質の分泌が見られませんでした。さらにコロニーサイズと抗菌活性には相関はありませんでした。これは、アリが感染症の予防機構として抗菌性物質分泌以外の機構を備えている可能性を示唆しているかもしれませんね!

アリは道しるべフェロモンやコミニュケーションに至るまで、多くの化学物質を利用しているケミスト的な側面を持っていますね!将来、高い抗菌活性を示す物質を分泌するゲノム編集されたアリを過程で飼育して医薬品として利用するという未来がくるかもしれませんね

参考文献

1)Stow A, Briscoe D, Gillings M, Holley M, Smith S, Leys R, Silberbauer T, Turnbull C, Beattie A. 2007Antimicrobial defences increase with sociality in bees. Biol. Lett. 3, 422–424.

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こめやんは理学博士です!化学の面白さと学ぶメリットを少しでも伝えるために日々頑張ります! ツイッターにて疑問点や依頼などを募集しています! 論文の和訳やレポートのチェックなどでもお気軽にお待ちしております

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