反応の特徴
金属触媒による炭素-炭素二重結合の再配列反応はアルケンメタセシス、あるいはオレフィンメタセシスと呼ばれます。それぞれ反応形式による閉環メタセシス重合(ROMP)、閉環メタセシス(RCM)、非環状ジエンメタセシス重合(ADMET)、開環メタセシス(ROM)、交差メタセシス(CMまたはXMET)などに分類されます。
オレフィンメタセシス反応は温和で選択的なため、全合成やポリマー、生物化学などの分野においてよく使われています。例えば閉環メタセシス重合を用いると様々な機能性ポリマーの合成が可能ですし、閉環メタセシスは炭素間だけでなくヘテロ環を含む中員環から大環状化合物も構築可能です。
..ニトリル、アミンなどの塩基性の官能基が存在する場合や、交差メタセシスによって四置換オレフィンを形成する場合、あるいは交叉メタセシスや大きな環を形成する際の閉環メタセシスでの場合は立体選択性が低いという問題点があります。また、化合物によってはグラブス触媒が残存して取り除きにくいということも起こりえます。
反応の歴史
この反応は1955年に始めて二重結合同士の組み換えが行われることが報告され、その13年後にN.Caleronらによってオレフィンメタセシスと名付けられました。1990年代の初頭までは、触媒活性が低かったこと、許容される官能基の種類も少なかったことから複雑な化合物の合成に利用された例はほとんど報告されていませんでした。しなしながら、その後現在使われているようなRuカルベン触媒 (Grubbs触媒)が非常にメタセシス活性が高く、様々な官能基が存在してもほとんど問題なく反応が進行することから信頼性の高い合成手段として幅広く用いられるようになりました。
反応機構
L2X2Ru=CHR型のRuカルベン錯体は、歪んだ四角錐型の結晶構造をとり、二つのハロゲン原子と二つのホスフィンが互いにトランス配置をとることによってエクアトリアル平面を形成して、そのアキシアル位をアルキリデン部位が占めていることが明らかとなっています。またGrubbsらによって上記のカルベン錯体によって進行する反応に関する様々な反応速度論的な実験結果に戻づいて二種類の反応機構を提唱しています。