⚠️ 記事内に広告を含みます。

精度と正確度の違いとは?

世の中には様々な計測機器がありますが、様々なことが原因で測定結果にばらつきが生じます。

例えば、同じメーカーの全く同じ2つの電子天秤で重さを測定しようとしたとき、同じ試料であっても、同じ測定結果が得られないことがあります。

さらに、同じ試料を同じ機械で何度か繰り返して測定しても値がばらつきます。

こうしたばらつき、誤差の原因はたくさんあります。真の値を得るためには減らせる誤差はなるべく少なくする必要があります。

そのためには誤差に対する概念を学び、減らせる誤差と減らせない誤差を理解しましょう。

本記事では誤差にまつわる話、特に精度と正確度について紹介します。

精度と正確度

朝体調が悪くて学校休みたいから体温計で何度も熱をはかって微熱を目指したことはありませんか?

体温計の値が測定毎にずれる ー 誤差があるため少しでも高い体温を目指して何度も測定してしまいます。

しかし、本当の体温は[36.5℃」などと基本的には一定の値をとるはずで、ばらついていないはずです。

このような測定対象の真の値を「真値」と呼びます。

体温計を使った体温測定では、本来の体温である「真値」に対して誤差があるために毎度体温がずれています。

[chat face=”komeyaniro.png” name=”” align=”left” border=”gray” bg=”none” style=””]実際には真値は測定不可能なはずなので予測した値になります。例えば複数回測定した平均値などとします。[/chat]

測定した体温はばらつくといっても、36.5℃、36.6℃、36.4℃、36.5℃というようにある値付近に集中していると思います。

この体温計Aは真値の36.5℃にかなり近い値をとっていてばらつきが少ないので正確度・精度が高い体温計です。

では同じ人が、別の体温計Bで測定したら38.5℃、38.6℃、38.4℃、38.5℃となりました。これは正確度は低いですが精度の高い体温計です。

[chat face=”komeyaniro.png” name=”” align=”left” border=”gray” bg=”none” style=””]精度が高いって本当は36.5℃なのにおかしくない?[/chat]

誤差の考え方では正確度と精度は厳密に定義されています。

  1. 精度の高さとは、ばらつきの少なさを意味します。
  2. 正確度の高さとは、真値に対する近さを意味します。確度あるいは真度とも。

精度が意味するばらつきの少なさとは、真値に限らず、ある値に対するばらつきの少なさを意味します。

別の言い方をすれば精度の高さは何度測定しても同じ値を示すことから「再現性が高い」とも言えます。

精度の高さは再現性の高さを意味します。

では、もう一度先程の体温計について見てみましょう。

体温計Bは36.5℃の真値から離れているので正確度は低いですが、38.5℃付近に集中しているので精度は高いです。

それでは体温計Cはどうでしょうか?体温計Cは31.0℃、38.0℃、40.5℃という値を示しています。

[chat face=”komeyaniro.png” name=”” align=”left” border=”gray” bg=”none” style=””]体温計Cの場合はかなり値がばらついて正確度も精度も低そうですが[/chat]

体温計Cは計測結果が大きくばらついているので精度は低いですが、正確度は高いです。なぜなら、体温計Cの平均値は36.5℃と真値に近いからです。

よく精度と確度は射撃の的で表現されます。中心が真値です。

高正確度、低精度の射撃(中心が真値) public domain image cited from wikipedia

低正確度、高精度の射撃(中心が真値) public domain image cited from wikipedia

このように分析においては、この「精度」と「正確度」をしっかりと区別して考えます。

高精度・高正確度の測定方法が優れているのか?

理想的な測定方法は高精度・公正確度のものですが、現実の測定ではそれが必ずしも良いとは限りません。実用途に求められる水準をクリアする測定方法であれば、無駄に高精度・公正確度の測定方法を用いないことが多いです。なぜなら、高精度・公正確度な測定方法・測定機器は非常に高価であったり、壊れやすい、敏感(環境影響を受けやすい)、メンテナンスが必要、狂いやすいなどのデメリットが有るからです。また、測定方法に求められるのは精度や正確度だけでなく、再現性なども重要です。



保証値の概念

精度は測定毎のばらつきの少なさを意味するので、精度を評価するときは複数回測定すれば精度を分散や標準偏差といった値で評価できます。

一方で、正確度は「真値に対するばらつき」であるため、測定が不可能な真値がわからない限り本当の意味での正確度は評価できません

しかし、そうはいっても仮想的な真値を割り出して正確度を調べたいところです。

なぜなら、いくら精度が高くても真値からずれていれば分析としては役に立たないからです。

そこで、保証値(certified value)を使います。

保証値とは予めどのような値がでるかわかる試料を測定したときの値です。承認値や標準値とも呼ばれます。

電子天秤で言えば、校正用の分銅です。NMRで言えばテトラメチルシラン(0ppmの標準物質)などです。

1gなら1gが出るはずなのにこれが1.001gであれば0.001g分ずれていることになります。これを真値からのズレとしてみます。

標準物質は測定したいものと同じ物質が手に入るのならばそれを用います。例えばウシ血清アルブミン(BSA)の濃度を吸光度から求めたいときは標準物質として高純度の分析用のBSAを標準物質として用います。

もしも同じものがなければ似た性質のものを選んで使います。このあたりの定法は分析手法によって異なるので標準的なプロトコールを参照しましょう。

標準物質にも種類がいくつかある

標準物質といってもいろいろな種類があります。

標準物質は(Reference Material: RM)はJIS Q 0035:2008には「一つ以上の規定特性について、十分均質、かつ、安定であり、測定プロセスでの使用目的に適するように作成された物質」と定義されています。

とくに、「一つ以上の規定特性について、計量学的に妥当な手順によって値付けされ、規定特性の値及びその不確かさ、並びに計量学的トレーサビリティを記載した認定証がついている標準物質」を認証標準物質CRM(Certified Reference Material)と呼んでいます。CRMには計量トレーサビリティと不確かさが付与されています。

計量トレーサビリティーは意味がわかりにくいと思います。まず、標準には国家標準や国際標準という最上位の基準があります。この重さを1kgと決めます。というような基準です。全ての標準物質はその基準をもとに校正されるべきです。認証標準物質はその国際標準・国家標準からの測定のずれの履歴を記録しているのでそれを辿れば国際標準・国家標準にたどり着くことができます。これが計量トレーサビリティです。(国家標準に対してOOの不確かさを持つ標準物質を使って測定した〇〇の不確かさを持つ標準物質で測定し…〇〇の不確かさを持つ標準物質です。というようなイメージ?)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です