実験器具(ガラス器具)の洗浄は実験の基本!
反応をかけた実験器具を放置すると汚れが落とせなくなったり、実験器具が足りなくなったりして良いことはありません。汚れをきちんと落とさないと次に使用する人に迷惑がかかるのでしっかりと落とすようにしましょう。
ガラス器具の汚れの種類によって適した落とし方があるので、どんな汚れか把握するようにしましょう!
- 一般的な汚れ(有機化合物を中心に)
- 金属汚れ(クロム、亜鉛、鉄、パラジウム、銅 etc.)
- 炭素汚れ (活性炭など)
- 油汚れ(シリコンオイル、グリースなど)
などがあります。
実験器具の汚れの落としかた(通常の汚れ)
実験器具の汚れは
- 溶かして落とす(化学的)
- 擦って落とす(物理的)
の2つです。なるべく溶かして落とすようにしましょう。こすると器具に傷がついてしまいます。特に分析用のメスフラスコ、メスピペット、メスシリンダー、石英セルなどは傷がつくと狂ってしまう恐れがあります。
実験器具は汚れの原因物質がついてから時間が経てば経つほど落ちにくくなると思ってください。使用した実験器具はその場で使用した溶媒などを使って大方の汚れを落とすように心がけるだけで、洗浄がかなり楽になります。
合成で利用する一般的なガラス器具の場合
- 実験器具を使用後すぐにその時に使用した溶媒等を使ってすすいである程度、汚れを落としておく
- 漬け置き用の洗剤(塩基性の洗剤など)にすぐに漬け置きをする(洗剤によって違う2~3時間あるいはもっと)。汚れを乾かさないようにする。
- 水道水でよくすすぐ。汚れが落ちない場合はブラシを使っても良い。(分析用でないなら水ですすぐ前にブラシで擦って良い)
- ガラス器具を目視で確認して、色がついてないか?こびりついてないか確認する。洗剤で落ちないものも多いので、アセトンで流して有機物を溶かし落とす
- 目視で確認して汚れがなければ、乾燥機に入れる(70℃なら大抵のガラス器具はOK、85℃、110℃)
分析用のガラス器具、生化学
- 実験器具を使用後すぐにすすぐ
- 漬け置き洗剤(塩基性、中性洗剤等洗剤の注意に従う)につける
- 水道水でよくすすぐ
- 超純水ですすぐ
- ドラフト内で自然乾燥 Or 窒素ガスで乾燥
頑固な汚れの落とし方
洗剤で漬け置きしても落ちない、アセトンで流しても落ちない、ブラシで擦っても落ちないという頑固な汚れにはその汚れにあった落とし方があります。
シリコンオイルやグリースなどの頑固な油汚れ
脂溶性の高い油汚れは、普通の洗剤に漬け置きしても弾いてしまって落とせないこともあります。
・特に高級脂肪酸などカルボキシル基があるような脂溶性の汚れ、シリコンオイル等も
濃NaOH、濃KOH水溶液、またはアルコール(メタノールなど)溶液につける、熱をかける。スリ付きのガラス器具はガラスが濃塩基に侵される可能性があるので気をつける。避けたほうが良いです。塩基性洗剤の濃厚溶液につけるのも有効です。
・脂溶性の高い汚れ
脂溶性が高い汚れは、よく使われるアセトンでは効果が薄いです(アセトンは極性が高い)。ヘキサン、オクタン、トルエン、キシレン、デカリンなどに浸漬する。一般的にはヘキサンを使用します。長時間の漬け置きには沸点の高いオクタンが良い。熱をかけると良い。
・食器用洗剤を使う
意外と食器用洗剤は油汚れに強いです。
一般的な有機化合物の汚れ
溶解性の悪い有機化合物の汚れはこびりつくと落ちなくなることがあります。ガラスの色がうっすら色づいてしまったりします。
・ありったけの溶媒を試す。特にDMSO、メタノール等
DMSOなどの溶解力の強い溶媒を試してみます。このとき、超音波洗浄機があれば超音波にかけながら溶解させてみます(小さなガラス器具は大きなビーカーなどに溶媒を入れて沈めて、ビーカーを超音波にかけます)。熱をかけるのも有効です。
・王水(塩酸:硝酸=1:3)または発煙硝酸で落とす
王水や発煙硝酸などの酸化力の強い強酸を使用して汚れを落とします。かなり多くの汚れはこれで落とすことが可能です。強酸なので注意して取り扱います。濃塩酸や濃硝酸だけでも有効な場合もあります。
・濃NaOH溶液
アルカリ性水溶液で熱すると汚れが落ちる場合があります。ガラスが侵される場合があるので、スリは注意します。酸を試したダメなら試してみます。
・物理的に擦って落とす(クレンザーやたわしなどで掻き落とす)
どうにも溶ける気配がないような物質は傷ではないことを確認したら、クレンザーで擦って落としましょう。金属スパーテルでは傷が付きやすいので、割り箸など木で汚れを掻き落とす方法もあります。モレキュラーシーブを入れてシャカシャカこすると落とせる場合もあります。激しくこすって落とすのはガラス器具が傷つくことがあるのでなるべくさけます。
金属汚れ
金属の汚れは酸を使うと良く落ちます。濃塩酸(HCl)が良く使われます。濃硝酸もよく使われます。落ちなければ王水や発煙硝酸を試しましょう。
炭素汚れ
墨汁の汚れが落としにくいのと同様に炭素汚れは落としにくい汚れの一つです。油分がある場合弾いて落としにくいのでアセトンやヘキサンで脱脂します。泡立てた洗剤やメラミンフォームのスポンジなどで擦って落とすか、濃水酸化ナトリウム溶液を使うこともあるようです。
特定の汚れに対する洗浄方法・汚れの落とし方
器具についた汚れを落とす方法をまとめると
- 有機溶媒で溶かす(高極性:DMSOやメタノール、低極性:ヘキサン、トルエン) 熱や超音波をかけるとなお良い
- 漬け置き(濃厚洗剤溶液、有機溶媒、酸や塩基)
- 強酸(塩酸や王水、発煙硝酸)
- 強アルカリ(濃NaOH水溶液、メタノール溶液)
- 研磨で落とす(クレンザーを使ってブラシなどで擦る)
過マンガン酸カリウム
過マンガン酸カリウムを使用した後のガラス器具は茶色ぽく色づいて落としにくいです。過酸化水素+濃硫酸(1:3)で落とすとキレイにおとせます。
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