塩化カルシウム管の使い道は?何に使うの?
塩化カルシウム管は反応系中に水が入らないようにするために使用するガラス器具です。有機合成では水分は試薬の分解などを引き起こすため避けるべきものです。
Chem drying tubes © Bfesser~commonswiki (Licensed under CC BY 4.0)
塩化カルシウム管は直線状からL字に折れ曲がったもの、スリ付き、スリなしのもの、U字型のものなどいくつかの種類があります。
この塩化カルシウム管の中に吸湿する塩化カルシウムを詰めます。主に化学実験において、反応容器(ナスフラスコ)と接続して、外気中に含まれている湿度(水分)が反応容器中に侵入するのを防ぎます。
こめやん
密栓すると栓が吹き飛ぶ恐れがあるのであまりやりません!
ガスが発生する反応で密栓すると内圧が高まって破裂します(大抵は栓が吹き飛ぶ程度ですが)。ガスが発生しなくても、発熱反応では熱で有機溶媒が揮発して内圧が上がって栓が吹き飛びます。そのため有機合成では密栓はあまりしません。
塩化カルシウム管を使えば、開放系でも乾燥条件下で反応することができます!塩化カルシウム管は塩化カルシウムを詰めてはいますが、完全に密閉系ではないのでガスが外に逃げることができるので破裂することはないです。
こめやん
三方コックと風船を使った不活性ガス置換は水や酸素などを嫌う反応でよく使います。風船と反応容器をつないでおけば、たとえガスが発生しても風船が膨らんで栓が吹き飛ぶことはないです。こちらは、反応容器内の不活性ガス置換もできるので優秀ですが、やや面倒とかそこまで厳密にやらなくてもよい反応もあります。
塩化カルシウム管の利点は、三方コックと比べて器具が安く大量に使える。何度か使えるので手軽など、気軽に蓋の代わりに使えます。
個人的には脱水条件でやるべきときは不活性ガス置換して反応させるほうが良いとおもいます。
塩化カルシウム管の作り方
塩化カルシウム管の作り方は簡単です。丸く膨らんだ部分と細くなった管の間の部分に脱脂綿を詰めて、塩化カルシウムをいれます。入れる量はまちまちですが、管内が7-8割埋まるくらい入れてしまって良いと思います。あまり量が少ないと吸湿がきちんとできないかもしれません。最後に塩化カルシウムが漏れてこないように脱脂綿で蓋をします。これで塩化カルシウム管の完成です。
塩化カルシウムの吸湿能力は高い!
塩化カルシウムは潮解性を持つ固体で水と反応して安定な2~6水和物を形成します。塩化カルシウムは吸水力が強いので、低湿度環境においても吸水力が強いのが特徴です。高湿度条件下(約90%)では塩化カルシウム質量の6倍程度、低湿度下(約30%)では質量の1.2倍もの水分を吸収すると言われています。そのため塩化カルシウムは空気中の水分吸着するのに適しています。塩化カルシウムの吸湿前後の重さを比較することで水分測定をすることもできます。
青色シリカゲルを詰めても使える?
塩化カルシウムの代わりに青色シリカゲルを使用しても同じような使い方ができます。
青色シリカゲルを使用すると視覚的に乾燥剤の寿命がわかるので便利です(青色→赤に変化)しかし、青色シリカゲルのほうが塩化カルシウムよりも乾燥能力が低い点は注意したほうがよいです。シリカゲルは質量の約4割程度しか吸水できません。(塩化カルシウムの1/15程度の能力しかない)。
シリカゲルの利点は塩化カルシウムのように固まらないのでかたづけが簡単です。乾燥能力が気になる場合はシリカゲルと塩化カルシウムのハイブリッドがおすすめです。
塩化カルシウム管の両端は青色シリカゲルで間に塩化カルシウムをサンドするようにすると塩化カルシウムは固まりにくくなって後片付けが楽になり、さらに目で見てどのくらい吸水したかが分かるのでおすすめです。
塩化カルシウムが固まって取れない
塩化カルシウム管を作って放置したりすると固まってとりだせなくなることがあります。無理にガラス棒やスパーテルでかき出そうとするとガラスが割れたりして危険です。取れない場合は水を入れて溶かしてやると簡単に取り除けます。手こずるときは超音波にかけると塩化カルシウムが早く溶けます。
ソーダ石灰との違いは?
ソーダ石灰(水酸化カルシウム+水酸化ナトリウム)も塩化カルシウムと同じように乾燥に使用できます。ソーダ石灰は二酸化炭素も吸着します。形が崩れにくいので良いですが、見た目でダメになっているのがわかりにくいです。
塩化カルシウム管の形はどれを使うべき?
どれを使っても良いですがナスフラスコで反応させるときは、スリ付きでL字型に曲がったものを使用したほうがよいと思います。直線状の塩化カルシウム管は懲戒した塩化カルシウムがたれてナスフラスコ内に混入する可能性があります。ただし、L字型のものは油浴や氷浴などにつけるときに塩化カルシウム管がぶつかってしまうことがよくあります。その場合は直線状のもののほうが便利です。
ナスフラスコに接続するときはスリ付きのものを利用し、ゴム管やガラス管に接続するときは、先がガラス管になっているものを使用します。