⚠️ 記事内に広告を含みます。

サーカディアンリズムとは?

サーカディアンリズムとは

サーカディアンリズム – 体内時計24時間のリズム

朝日が照らして明るくなると起きて、日が沈み夜になると眠り、また朝になると起きるー これを当たり前のように繰り返しています。この一日のリズムは太陽の動き、明るいー暗いという状態を見て作られたので、一日24時間のリズムが生まれました。

でも、みなさんは太陽の光をいちいち見なくても、夜になったら眠くなりますし、朝方になると起きると思います。特に日本から遠く離れた外国に行った時に起こる「時差ボケ」はその国で夜に当たる時間帯にしっかりと睡眠をとっても、昼間は眠くなります。この時差ボケは一日のリズムがしっかりとしている人ほどなりやすく、不規則な生活を送っている人はなりにくいと言われています。このように、太陽の明暗や自らの意思とは関係なく、身体には一日のリズムを刻んでいる「体内時計」があるのではないか?というように考えられるようになりました。この体内時計による約一日の周期をもつリズムを「概日リズム:サーカディアンリズム」と呼んでいます。実際に身体の中には一日の長さを知ることができるような体内時計が存在するのか?また、そのリズムを崩す原因やその影響、また正常に戻すためにはどうすればよいかを紹介します。


体内時計は脳内の視床下部に存在している

サーカディアンリズムを刻む体内時計は、脳内の視床下部という場所にある視交叉上核(SCN)という部分に存在しています。この視交叉上核は光の信号をキャッチして自律的に一日周期のリズムを作り出しています。一日のリズムをつくりだす仕組みは、哺乳類ではPer, Cry, Bmallの3種類のピリオド関連遺伝子やその遺伝子によって作り出されるタンパク質の量が昼では分解されて少なく、夜では増えるなどというように変化させることで、昼と夜とを見分けています。

一度崩れたサーカディアンリズムも戻すことが可能です。なぜなら、一日のリズム(昼夜の時間)は季節や地球上の場所によって異なっているので調節できないと季節・場所が変わると対応できないからです。

サーカディアンリズムの調節には光が関わっています。光による体内時計の同調は、視交叉上核でしかできません。その仕組は、眼球の網膜に存在する神経細胞が480nm、数千ルクスの光を浴びると、その信号が視床下部の視交叉上核に運ばれます。この信号によりPer1遺伝子転写の亢進が起こすことによって調節が行われます。主要な体内時計は、視交叉上核ですが、実は末梢組織(腎臓、肝臓、心臓等)にも体内時計が存在し、独自に24時間周期を刻んでいることがわかっています。しかし、末梢組織の体内時計は自分で調節できず、視交叉上核による副腎皮質ホルモンをキャッチすることによって受動的に調節を行っています。

サーカディアンリズムはなぜ重要?

一日のリズムが崩れることは人間のわかる形では、睡眠が不規則になって眠りが浅くなったり、日中眠くなるなどがありますが、実はこれ以外にも一日のリズムに合わせて目に見えない形で身体は動いています。よく、成長ホルモンは夜OO時くらいに分泌されるから、何時までに寝たほうがなどと聞いたことがありませんか?このようにホルモン放出もサーカディアンリズムをもとに調節されています。サーカディアンリズムをもとに調節されているものとして、

  1. 睡眠・覚醒
  2. 血圧
  3. 心拍数
  4. 体温
  5. ホルモン放出

などがあります。サーカディアンリズムが崩れると上記の生理現象のバランスが崩れてしまい、様々な不調が身体に現れる可能性があります。また、社会生活に置いても、遅刻や居眠りの原因になるため問題となります。

疾患との関連性

サーカディアンリズムの乱れは、それに関わる様々な生理現象を乱すことに繋がるため、多くの疾患との関連が予想されています。例えば、夜間の食事はインシュリン抵抗性が落ちるといわれています。サーカディアンリズムが崩れて昼夜逆転しているような状況ですと食事よる血糖上昇に対応できなくなってしまいます。また、中性脂肪が上昇するなどメタボリックシンドロームの発症の重要なファクターになっていると考えられています。単純に昼夜が逆転している影響で、睡眠不足や食欲不振などの体調不良が起こる場合もあります。サーカディアンリズムが崩れると血圧の上昇や、虚血性心疾患のリスク上昇などが疑われています。生物の超基本である細胞分裂や増殖にもサーカディアンリズムは関わっているとされ、肝臓の細胞分裂、修復機構が低下することがわかっています。これは肝硬変などの肝疾患との関連が疑われています。


体内時計の合わせ方

サーカディアンリズムを調節する要素としては、主に、光、食事、運動、睡眠などがある光に関しては、明け方に浴びる光が重要であるとされています。明け方に強い朝日を浴びることによって一日のリズムを合わせることができます。逆に、夕方から夜間に強い光を浴びてしまうとリズムが崩れるといわれています。そのため夜間は強い光を浴びないようにする必要があります。リズム同調に必要な光は以外と弱くても平気です。オフィス内の蛍光灯の光でも効果があることがわかっています。逆に言えば、リズムを崩す、夜に浴びる光は弱くても効果が出てしまうので(夜間のコンビニ等でも)注意が必要です。ブルーライト(波長が短い青い光)のほうがリズム同調に効果が高いので、寝る前のスマホなどはサーカディアンリズムの調整という面でもやめたほうが良いでしょう。

食事も起きている間だけしか取れないので、体内時計の調節に利用されていると考えられています。詳しい機構は明らかになっていませんが、摂食行動じたいあるいは栄養状態の変化によってサーカディアンリズムが調整されていると考えられています。食事を毎日一定の時間に取るようにすることで、リズム形成が起こることがマウスの実験により明らかにされています。

つまり「なるべく規則正しい生活を送ること」でサーカディアンリズムは調整されることがわかっています。同じ時刻に同じ行動を取ることを心がけることで、正しい体内リズムを形成することができます。サーカディアンリズムを正しい周期に調整するには7-10日間かかると言われています。リズムを崩すのは簡単ですが、正しいリズムを刻んで行くには、毎日の心がけが必須です。規則正しい生活を続けていれば、体内時計が狂いにくくなるので、昼食や夕食の時間を合わせる、夜間に光を浴びないなど日常の工夫を行いましょう

1) Hiroyuki Miyamoto, Eiko Nakamaru-Ogiso, Kozo Hamada, Takao K. Hensch
“Serotonergic integration of circadian clock and ultradian sleep-wake cycles”.
The Journal of Neuroscience,2012,doi: 10.1523/JNEUROSCI.0793-12.2012

2)京都大学薬学研究科 岡本均教授http://www.pharm.kyoto-u.ac.jp/system-biology/labo.html サーカディアンリズム研究、特に哺乳類における分子機構の解明に多大に貢献しています。

3) 池田正明. “生体リズム研究の現在.” 外科と代謝・栄養 49.6 (2015): 319-326.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です