スイセンをニラと間違えて食べて食中毒…という話題は絶えません。家庭菜園では起きやすいですが最近も事例があったようです。
ニラと間違えスイセン販売 3人おう吐 千葉の青果店
ニラと似ていますが絶対食べないよう注意を呼びかけています。
https://t.co/WAfjjemeiR— NHK生活・防災 (@nhk_seikatsu) November 26, 2019
スイセンはポピュラーな植物なので、事故が起きやすいですが、どんな毒があるのでしょうか?そんなに見分けにくいのか?見分け方などはないのか?紹介します。
スイセンの毒性
スイセンは純朴な花を咲かせるために園芸用に栽培されることの多い人気の植物です。
スイセンは野生化している場合もあります。そんなスイセンですが、実は毒があります。
スイセンの毒はリコリンという名前の化学物質です。
ヒガンバナ科の植物が持つアルカロイドで食べると吐き気を催します。
アルカロイドの中では毒性は低めで大量に食べなければ死亡することは少ないですが、毒はラッキョウみたいな球根部位に多く、大量に食べて死亡した例もあるようです。
スイセンとニラの見分け方
スイセンとニラの見分け方は簡単です。
スイセンはニラ独特のネギ系の匂いがしません。
ニラは葉が細長く薄めで、ひげ根ですが、スイセンは葉が短めで厚みがあり、球根があります。
逆に球根があるせいで球根を食べるアサツキなどと間違えて食べてしまう人もいるようです。
見分けようとすれば簡単に見分けられるはずです。
下にニラとスイセンを比較した動画を載せました。
スイセン食中毒の症状と事例
スイセンの誤食は結構多く、自宅に植えたスイセンをニラと間違えて食べた例や河川敷などの野生のスイセンをニラと間違えて食べる例が多いです。
平成16年の東京都内で起きたスイセンの事故の例では自宅に植えていたニラ様の植物を鍋に入れて食したところ、数分後に食した3名全員が吐き気、発熱、しびれなどの食中毒症状を起こしました。
牛山博文, et al. “化学物質及び自然毒による食中毒等事件例-平成 16 年.” (2004).
橋正幸, 佐藤正幸, and 小島弘幸. “道内における植物性自然毒による食中毒事例 (平成 28 年).” (2017).
スイセン毒・リコリンの作用機序
スイセンはヒガンバナ科の植物でヒガンバナ自体にも毒があることは古くから知られています。「リコリン」は1877年にヒガンバナ科の毒素として初めて発見されたアルカロイドです。
リコリンは非常に多様な生理活性を有しており、薬学的に非常に興味深いアルカロイドです。中国では実際に生薬の”水仙”として昔から外用薬として利用されています。
参考 水仙属 - 维基百科,自由的百科全书取得できませんでした
リコリンは抗白血病、抗腫瘍、抗血管新生、抗ウイルス、抗菌作用、抗炎症作用などの薬理効果が確認されています。
Cao, ZhiFei, Ping Yang, and QuanSheng Zhou. “Multiple biological functions and pharmacological effects of lycorine.” Science China Chemistry 56.10 (2013): 1382-1391.
リコリンの毒性効果の中心は嘔吐や下痢症状です。嘔吐に関してはセロトニン受容体の5-HT3受容体が関与しているという研究報告があります。
Kretzing S, Abraham G, Seiwert B, Ungemach FR, Krugel U, Teichert J, Regenthal R. In vivo assessment of antiemetic drugs and mechanism of lycorine-induced nausea and emesis. Arch Toxicol, 2011, 85(12): 1565–1573
5-HT3受容体にリコリンが結合、作用すると迷走神経・交感神経を経て嘔吐中枢に伝達し、嘔吐が惹起されます。
武井大輔, et al. “嘔気・嘔吐の薬物療法.” 日 本 緩 和 医療 薬 学 雑 誌 2 (2009): 117-117.
5-HT3受容体拮抗薬であるグラニセトロンは制吐薬として利用されています。