ゼロカロリー飲料は危険なのでしょうか?
世の中には人工甘味料が入った製品を完全に避けている人もいます。
人工甘味料という化学物質はヒトに甘味を感じさせる一方で、糖分としての機能を持ちません。
だから、人工甘味料は甘味はあってもカロリーはゼロなのです。
ただ甘味を感じさせるだけであれば何の問題も無さそうです。しかし人間は甘味を感じるだけで、糖分とったと勘違いして、血糖値を下げるためのインシュリンというホルモンを分泌する可能性があります。
吸収されずに腸内に移行した人工甘味料が腸内細菌に影響を及ぼす可能性があります。
このように人工甘味料は「ナチュラルでない」から危険だ!という主張があります。「自然界に存在しない物質が体に未知の作用を及ぼす可能性がある」というのは人工添加物にとっては避けられない議論であり、確かに一理あります。
肥満や糖尿病など、健康のためにゼロカロリーを飲む人にとって、人工甘味料が安全かどうかは気になるところです。実態を調査してみました。
目次
人工甘味料の何が問題か?
摂取カロリーで問題になるのは糖質と脂質です。
人工甘味料は砂糖よりも強い甘味を持ちながらもカロリーが無いことから、砂糖の代わりに使えばカロリーを抑えた健康に良い食品が作れます。
特に炭酸飲料は多くの砂糖が含まれ、日常的に沢山摂取されることから、糖分を含まないゼロカロリー飲料は健康増進に一役買っていました。
糖分は日常的に沢山摂取するため、必然的に人工甘味料の摂取する機会も多くなります。そうなると人工甘味料が安全かどうかが気になるわけです。
人工甘味料の非難の歴史
人工甘味料が悪者扱いされがちなのは過去の教訓があるからです。
世界初の人工甘味料は古代ローマ帝国で利用されていたサパと呼ばれるシロップであると言われています。サパの正体は酢酸鉛です。サパは鉛の鍋でぶどう汁を煮詰めて作くることから酢酸鉛が生成します。当時鉛の毒性は知られていなかったため安価な甘味として普通に利用されていました。
合成人工甘味料の初は、サッカリンです。サッカリンは沢山利用されていましたが、発癌性が疑われ、使用が取りやめになった過去があります。現在では発癌性の再現性がないことから安全と見られ、中国など海外では利用されているようです。
サッカリン以降も人工甘味料は作られています。その中には毒性のため使用されないものもあります。
人工甘味料の問題点
人工甘味料の問題の一つが「糖質ではないが糖質として体に作用するか?」です。具体的には、
- 血糖値が上下するか?(血糖値は高くても低くても体に悪影響を及ぼす)
- 血糖値が上がりにくくなったり下がりにくくなったりするか?(耐糖能異常)
- インスリン分泌に影響は与えるか?(糖吸収によって上昇した血糖値を糖の取り込みを促進させることで血糖値を下げる作用)
- グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)値は変化するか?(糖を認識して分泌されるとインシュリンを出して血糖を下げる作用がある)
人工甘味料は直接インシュリン、血糖値、GLP-1値に影響を与えない
ブドウ糖(グルコース)を摂取すると速やかに吸収されて血糖値が上昇します。Steinertらの研究1)によるとアスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロースを投与により血糖値、インシュリン値、GLP-1値は変化しませんでした。
Steinert, Robert E., et al. “Effects of carbohydrate sugars and artificial sweeteners on appetite and the secretion of gastrointestinal satiety peptides.” British journal of nutrition 105.9 (2011): 1320-1328.
人工甘味料(ゼロカロリー飲料)が糖尿病を促進させるか?予防するか?は不明
人工甘味料を含むゼロカロリー飲料を飲むことで糖分摂取が抑えられて糖尿病を予防できるという主張もありますが、むしろゼロカロリー飲料を飲むことで糖尿病になりやすくなるという主張もあります。ゼロカロリー飲料を好んで飲む人は糖尿病リスクの高い人である可能性もあります。現状は促進させるのかどうかは決着がついていませんが、人工甘味料が間接的に血糖値調整に関わっている可能性が示唆されています。
人工甘味料問題が再燃したネイチャーの論文
近年また人工甘味料の安全性が問われるきっかけとなった論文があります。
世界的に権威のある雑誌「Nature」に2014年に投稿された論文「Artificial sweeteners induce glucose intolerance by altering the gut microbiota」です。
この論文の主な内容は人工甘味料が耐糖能異常を起こし、腸内細菌叢バランスを変化させるというものです。
こめやん
この論文を引用して、カロリーゼロ商品の危険性を訴えている記事が多いです。
耐糖能異常は人工甘味料が腸内細菌叢に影響を与えることが原因
著者らは5%人工甘味料(サッカリン、アスパルテーム、スクラロース)と95%ブドウ糖を含む10%ブドウ糖+人工甘味料水を11週マウスに与えて血糖値の変化を測定しました。
その結果、人工甘味料を与えたグループで異常な血糖上昇が確認されました。中でもサッカリンが最も大きな変化を与えました。以降の実験はサッカリンだけで行っています。
この研究のおもしろいところは抗生物質を与えるとこの変化がなくなる点です。腸内細菌が悪さをしてそうなので、人工甘味料を与えられていないマウスにサッカリンを与えられていたマウスの腸内細菌を移植すると耐糖能の異常が起こりました。つまり、サッカリンが腸内細菌の変化を引き起こす事によって耐糖能異常が起こったということがわかりました。
しかし、注意点があります。この論文で調べられている人工甘味料は主にサッカリンです。
また、腸内細菌バランスが人工甘味料によって変化したことが原因だとしていますが、マウスとヒトとで同じ効果が起こるかは不明であり、無菌状態、高脂肪食で育てられたマウスの特殊性についても考慮する必要があります。
日本ではサッカリンを含む食品は制限されており、発癌性が疑われた過去があるため食品会社も避けているようです。
原材料を見ると大抵はアセスルファムカリウム、アスパルテーム、スクラロースなどです。
この研究結果だけでは人に対する有害性を訴えるのには不十分であると言えます。
こめやん
ダイエットコーラに含まれるアセスルファムカリウムとアスパルテームは血糖上昇に影響しない
ダイエットコーラ中のアセスルファムカリウムやアスパルテームが血糖値の上昇を誘発するという主張がありますが、これが本当なのかを調べた研究「The acute effects of the non-nutritive sweeteners aspartame and acesulfame-K in UK diet cola on glycaemic response」1)があります。この研究では
- 125mLの水に25gのグルコース+236μmLの水
- 236mLのダイエットコーラ+125mLの水に25gのグルコース
- 125mLの水に236mLのスクロースで甘味づけしたコーラ
の条件をやった結果、人工甘味料を加えることによる有意な血糖上昇作用は見られなかったようです。スクロースはグルコース(ブドウ糖)と比べて血糖上昇量は小さかったです。
1) Solomi L et al, Int. J.Food Sci. Nutr., 2019, 707):894-900
結論としては、今のところ人工甘味料を含むゼロカロリー飲料を飲むことで糖尿病になる直接的な証拠はない(示唆する内容はある)。
また腸内細菌バランスについてはマウスでは確認されているが、ヒトでは不明。
今後の研究の結果次第ですかね。
こめやん