皮膚に塗布するワセリンは石油からできていると聞くと安全性などが気になりますよね?
本記事ではワセリンとは一体どんな成分からできているのか?安全性はどうなのか?赤ちゃんなどに利用してもよいのか?という内容を紹介します。
ワセリンとは?
ワセリンは「軟膏」の主成分として配合されている油です。分子量が大きいため蒸発しにくく、粘性の高い液体です。
ワセリンの作用は
- 皮膚を摩擦などの刺激から保護
- 皮膚からの水分の蒸発を防ぐ
などがあります。
ワセリンという名前は実はユニリーバの商標ですが、一般名称として定着しています。
ワセリンの成分
ワセリンの安全性について議論するにはワセリンの正体を知る必要があります。
しかし、残念なことにワセリンは一種類の物質からできているのではなく、複数の化合物からなる混合物であり、しかも複雑な成分組成のようでどんな物質が含まれているのか?具体的な情報は殆ど見つかりませんでした。
一般的にワセリンは炭素数25以上の炭化水素からなる物質で、石油を精製して作ったものだそうです。白色ワセリンは黄色ワセリンよりも純度の高いワセリンです。
炭化水素はメタンやブタン、ベンゼンなどCとHからなる化合物の集合体です。ベンゼンと聞くと体に悪そうな気がしますが、ワセリンに含まれている炭化水素はもっと分子が大きいもので、ベンゼンは含まれていないです。
ワセリンの安全性
ワセリンに含まれている炭化水素類は化学的には非常に安定な分子で、ほとんど反応しません。炭化水素のうち低分子量のものは体に作用することもありますが、分子量が大きいものは吸収されにくく、体に作用を及ぼしにくいです。
ワセリンは古くから使われており、特に目立った副作用などは見られていないため安全とされています。しかし、ワセリンは混合物であるがゆえに、発がん性をもつ炭化水素類などが含まれているかもしれないという潜在的な危険性については指摘されています。
基本的に発がん性などの問題となるのは直鎖状の脂肪族炭化水素よりも芳香族炭化水素類(ベンゼン環等を持つもの)であり、いわゆるPAHs(多環芳香族炭化水素)です。
NMRを用いた調査によると、白色ワセリンのほうが黄色ワセリンよりも芳香族炭化水素の量が少ないことがわかっています。多くのワセリンサンプルを調べてところ1%未満が芳香族炭化水素で、のこりの99%以上が脂肪族炭化水素であるという調査結果があります。
Lachenmeier, Dirk W., et al. “Evaluation of mineral oil saturated hydrocarbons (MOSH) and mineral oil aromatic hydrocarbons (MOAH) in pure mineral hydrocarbon-based cosmetics and cosmetic raw materials using 1H NMR spectroscopy.” F1000Research 6 (2017).
荻田義明, et al. “白色ワセリンの品質特性の比較検討.” 医療薬学 33.7 (2007): 613-618.
- きちんとしたメーカーのものを利用する
- 純度の高いワセリンを使用(白色ワセリンなど)
- むやみやたらに使用しない
- 無名メーカーなど安い化粧品などには純度の低いワセリンが使用されている危険性がある
です。
またワセリンは皮膚表面に油の膜をはることによって皮膚を保護するため、清潔にしていない皮膚に対して塗ってしまうと汚れなどを閉じ込めてしまうことになるので症状を悪化させてしまう可能性があります。洗浄など清潔にした後、保湿後、ワセリンを塗ったほうが良いです。
ワセリンの様々な用途
ワセリンはやけどや切り傷、乾燥肌などの保護に皮膚に塗る以外にも様々な用途があります。
例えば
- 網戸・ふすまなどのレールを滑りやすくする
- 革製品の保護作用
- 蓋のすり合わせ部位に塗って気密性を上げる
ワセリンを除去・拭き取る方法
ワセリンは脂溶性の高い油であるため、水で洗っても弾いて落とせません。アルコールにも溶けません。
ワセリンを落とすには灯油やベンジンなどの油が効果的ですが、安全性の面からはおすすめできません。
石鹸や家庭用食器洗い洗剤などを使うと落とすことができます。水洗いできないような場所では、アセトン(除光液)やイソプロピルアルコールが良いです。