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トリブチルスズを使った還元反応 有機水素化スズを使った反応

トリブチルスズによる還元

有機スズ化合物とは?

有機スズ化合物はハロゲンを水素に還元、もしくはアルケン・アルキンへのヒドロスタニル化をするのに使用します。

反応性は、スズ上のアルキル基の違いによって ジフェニル>トリフェニル>ジブチル>トリブチル

の順に反応性が高いです。一般的に良く利用されるものはトリn-ブチルスズ(n-Bu3SnH)です。

トリブチルスズは安定な液体です。試薬自身の傘高さとラジカル機構により進行するため特徴的な選択性などを示す場合があります。

一般にトリブチルスズを使ったハロゲンの水素化はラジカル機構によって進行します。そのため、立体障害が大きい部位の還元も可能です。

クロロアルキルなど不活性な基質に対してはラジカル開始剤(AIBN)を使用します。


反応条件

トリブチルスズによる脱ハロゲン化は芳香族溶媒(ベンゼン、トルエン)、THF、ジクロロメタン中で行われることが多いです。

個人的にはトルエンを使うことが多いです。

ラジカル開始剤はAIBNが良いと思います。AIBN以外は使ったことがないです。

脱ハロゲン化反応の選択性

ラジカル機構で進行するため、脱ハロゲン化の反応はラジカルが安定なベンジルハライド、アリルハライド、第三級ハロゲン化アルキルの反応性が高いです

アリールハライドのほうが反応性が低く、IとClが混在している場合はヨウ素を選択的に水素化できます。

反応性は I>Br>Cl>Fの順に小さくなります。

実際にアリールクロライドを還元しようとすると高温条件が必要です。

アルキン、アルケン、アルデヒド、ケトン、酸ハロゲン化物、エステル、ニトリルなどが存在すると反応するので注意です。

MgI2やAlCl3、Et3Bなどのルイス酸を添加することによってジアステレオ選択性を高めることが可能であるという報告があります。

ルイス酸にはEt3Bを添加することが多いです。

水酸基やアミノ基が裸の状態でも問題なく進行するため、糖、ヌクレオシド合成などでハロゲンの水素化に利用されることが多いようです。

トリブチルスズによる脱ハロゲン化

トリブチルスズによる脱ハロゲン化 Recsei, Carl et al
  Journal of Organic Chemistry, 79(3), 880-887; 2014

原料(7.0 mg、22μmol、1.0当量)をフルオロベンゼン(1 mL)に溶解し、水素化トリブチルスズ(13μL、48μmol、2.1当量)を加えて50℃で撹拌した。メタノール(1 mL)中の2,2′-Azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride(7.1 mg、22μmol、1.0当量)の溶液を10時間かけて滴下した。未反応だったため、トリブチルスズ水素化物(5.0μL、19μmol、2当量)および2,2′-Azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride(2.0 mg、6.2μmol、0.28当量)のメタノール(0.5 mL)溶液を加え、50°C、8時間で撹拌を行った。溶液を室温に冷却し、エーテル(10 mL)と5%フッ化カリウム溶液(10 mL)で分液してカラム精製し、目的物を84%で得た。

トリブチルスズによる脱ハロゲン化反応は有用な反応の一つで、脂肪族から芳香族まで多くの基質のハロゲンを還元することが可能です。

カルボニル化合物の還元

トリブチルスズはアルデヒドやケトンに対しても反応してアルコールに還元します。

エステルやニトリルなどは反応性が低いので還元されいくいです。

アルコールの脱酸素化(チオカルボニル化の後)

アルコールをチオカルボニルエステル化した後にトリブチルスズで還元的に水素化して脱酸素を達成する方法は糖類の合成でよく利用されています。

この方法はハロゲン化もしくはスルホニル化(OMs, OTs)した後にLiEt3BHにより還元もしくはトリブチルスズによる脱ハロゲン化する方法と比べてどちらが有用かは基質によって変わりそうです。

やはり、利点としてはヒドリド還元のような求核置換よりも、ラジカル機構で還元するトリブチルスズのほうが立体障害には強いと思われます。中性条件で還元できることから、脱離や転位なども起こりにくいと考えられます。

トリブチルスズによるアルコールの脱水素化はオレフィンやケトン、エステル、エポキシド存在下反応させることができます。

ヒドロスタニル化

アルキンやアルケンにより得られるアルキルスズはStilleカップリング反応に利用する基質として重要です。

アルキンに対するヒドロスタニル化の位置選択性は重要で、これらはトリエチルホウ素やZrCl4などのルイス酸の添加によって制御できます。ZrCl4はZ選択的なヒドロスタニル化が可能です。

1) 小杉正紀, and 右田俊彦. “炭素官能基供与剤としての有機すず化合物.” 有機合成化学協会誌 38.12 (1980): 1142-1150.

2)村形政利, and 星野修. “有機スズ試薬を用いたカルボニル化合物のエナンチオ選択的ラジカル反応.” 有機合成化学協会誌 59.6 (2001): 560-568.

3) EROS “Tri-n-butylstannane” http://reag.paperplane.io/00002759.htm

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