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タイヤが黒いのはなぜ?

タイヤが黒いのはなぜ?

タイヤが黒いのはなぜなんでしょうか?身の回りにはたくさんのタイヤがありますが、黒いタイヤ以外は見たことがありません。そこで、タイヤが黒くなっている理由を調べてみました。

黒いタイヤしか無い?

自動車から自転車までありとあらゆるタイヤは真っ黒

自動車のボディーカラーに合わせて赤や青といったカラーのタイヤがあっても良いと思うのですが、色のついたタイヤを見たことがありません。

黒いタイヤ

こめやん

いろんな色したカラータイヤを販売したら儲かりそう

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タイヤ販売会社の「タイヤは黒いものだ」という固定観念のせいでこんな簡単なことに気づかなかったのでしょうか?詳しく調べてみました。


タイヤが黒い理由

法律で黒いタイヤのみが認められている。車検が通らない

という理由ではありませんでした。黒いタイヤの上から塗装で塗ってしまっても構わないそうです。そして、「カラータイヤ」と検索してみればわかりますが、実はカラータイヤも販売されています。[blogcard url=”https://www.amazon.co.jp/WANLI-TIRE-%E5%9B%BD%E5%86%85%E6%AD%A3%E8%A6%8F%E5%95%86%E5%93%81SCTR%E8%BB%BD%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A%E7%94%A8%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%A4-WANLI-%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC/dp/B00R76A38Y”]答えは、

タイヤの性能(耐久性)を向上させるために加えるカーボンブラックが含まれているから」

です。カーボンブラックは炭素の微粒子のことで鉛筆の芯を削ったときの粉のようなものです。

カーボンブラック(carbon black)は、工業的に品質制御して製造される直径3-500 nm程度の炭素の微粒子。化学的には単体の炭素として扱われるが、表面には様々な官能基が残存した複雑な組成を持ち、いわゆる無定形炭素と呼ばれるものに含まれる。

カーボンブラック: wikipedia(日本語版)より引用

この炭素の粉をゴムに加えてタイヤを作るのでタイヤは真っ黒なものばかりだということですね。黒に色をいれても色がつかないからカラータイヤは無いんですね。

カーボンブラックを加えると耐久性が上がるのはなぜ?

なぜ炭素の粉を加えると性能が上がるのでしょうか?まず、タイヤに求められる性能としては「滑らないこと」が必須です。もし、タイヤがつるつるしていたら自動車進みません。つまり「タイヤの抵抗」が重要です。他には、地面との摩擦ですり減りにくい「耐摩耗性能」や雨風、光で劣化しにくい「耐候性能」などがあります。

カーボンブラックを加えると「耐摩耗性」が向上することがわかっています。加えるカーボンブラックの粒子径が細かいほど耐摩耗性が向上します。(山田準吉. “カーボンブラックの特性とゴムの摩耗.” 日本ゴム協会誌 44.2 (1971): 107-124)また、ゴムにカーボンブラックを加える量が多くなるほどゴムのヒステリシスロスが増加します。ヒステリシスロスとはゴムが変形ー再生した際に消費されるエネルギー損失のことです。この値が大きすぎると転がり抵抗が増加して、燃費が悪くなってしまいます。

転がったタイヤがやがて止まってしまうのは、回転を妨げる力が働いているからであり、その原因の一つに「地面との摩擦」や「タイヤの変形」があります。自転車では空気が抜けたタイヤのほうが漕ぐのに力を使いますよね?完全な円よりも歪んだ円のほうが転がしにくいため、タイヤのゴムは変形しにくいほうが良いです。タイヤの変形に伴うエネルギー損失がヒステリシスロスです。

分子レベルではどうなっているのか?

結論から言うと炭素粒子が分子レベルでどのように働いてゴムの性質を変化させているかはよくわかっていません。「炭素粒子をゴム中に加えることによって形成された応力の大部分を担う特殊な構造」がその原因であるとされています。ゴム中では、カーボン粒子は単独では存在せずに、10-20個程度が連結した非球状の形状をしています。ゴムの鎖状分子はカーボン粒子とVander-Waals力による物理的吸着や炭素上のカルボキシル基等の酸素含有官能基との相互作用が行われていると考えられています。[ a)Rivin, D., et al. Rubber Chem. Technol. 1968, 41, 330.  b) Gessler, A.M., et al. Ruber World, 1985, 192, 30.]

詳しいことは以下の総説を読んでみてください。深堀美英. “ゴムのカーボンブラック補強解明の新展開 (下).” 日本ゴム協会誌 83.6 (2010): 182-189.

つまり、炭素表面上の構造とゴム分子が絡まってできた構造体によってゴムの特性が様々に変化するということです。逆に言えば、炭素粒子でなくても同じようなナノ粒子であれば同様の性質を付加することができそうですよね?実際にカーボンブラックではなくシリカゲル粒子を加えることでカーボンブラックと同等以上の性質のゴムが得られるようです。シリカゲルは白色の粉末で黒くはないので、これを使えば黒くないタイヤが作れそうです。しかもシリカ粒子を加えたタイヤは転がり抵抗が小さくなる=低燃費になるということから、環境負荷の小さい低燃費タイヤなどとして販売されています。タイヤの材料が「炭素」→「ケイ素」へと変化していってるようです。タイヤが依然として黒いのは少しカーボンブラックがふくまれているからです。今後はカーボンブラックフリーのタイヤでも性能が落ちず、安価でより高性能なタイヤが販売されるようになるかもしれませんね。

こめやん

タイヤって地面走って汚れるので黒が一番良さそう



参考文献

村岡清繁. “タイヤ用ゴムにとって粘弾性特性とは.” 日本ゴム協会誌 74.6 (2001): 242-247.
土井昭政. “タイヤにおける最近の技術動向.” 日本ゴム協会誌 71.9 (1998): 588-594.
今村高昭. “耐摩耗性.” 日本ゴム協会誌 50.4 (1977): 241-258.

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