サンクコスト効果とはお金や労力、時間をかけた行為に対して、たとえその対価が少なくても対価を回収したり、継続してしまうという心理的な効果のことです。
サンクコスト効果とは?
まず、サンクコスト(埋没費用)とは、支払った費用や労働などのうち途中でやめようが戻ってこないコストのことです。
サンクコストには金銭や労働だけでなく時間も含まれます。
購入したらキャンセルできない商品もサンクコストの一部です。
サンクコスト効果はもう取り戻せない支払ったサンクコストに対してその対価を得ようとする心理効果のことです。人間は支払ったものに対して無駄に思いたくないという心理が働いてしまいます。
特に払ったものが多いほど、それに見合った対価を得ようとします。サンクコスト効果の面白い点は、得ようとする対価が期待よりも小さく、マイナスになる可能性がある場合でも支払ったコスト分を回収しようとする傾向があることです。
サンクコスト効果の例
サンクコスト効果で論文でもとりあげられている例を紹介します1)。
ある男がコンテストの優勝商品としてサッカーのチケットを受け取った。友人を誘って友人は12ドルのチケットを購入した。しかし、サッカーの試合の日は吹雪で試合に行くのも大変だった。無料でチケットをもらった男は吹雪の中スタジアムに向かうのも試合を見るのも嫌だと思い、見に行くのを中止しようと提案するが、チケットを購入した友人は12ドルが無駄になると言って効かない。
参考) Arkes, Hal R., and Catherine Blumer. “The psychology of sunk cost.” Organizational behavior and human decision processes 35.1 (1985): 124-140.
無償でチケットを受け取った男は吹雪の中3時間もの試合を見るほうが試合を楽しむよりも嫌だと感じたため、試合に見に行くことを中止しました。これは実に合理的な判断です。この男性は何のコストも支払っていないため、サンクコスト効果が働いていません。
一方で、友人は12ドルのチケット代を支払ってるためサンクコスト効果が働いています。そのため、吹雪の中観戦する苦痛が試合を楽しむことよりも上回ったとしても支払ったコストを回収するために試合を見に行こうとするという非合理的な判断を下してしまいます。
せっかくチケット代を払ったからもったいないという意識が働きます。
こめやん
サンクコスト効果で問題となるのは、「時間」というコストを無視する傾向があることです。
上記の例では、試合を観覧することでチケット代の回収をしているつもりかもしれませんが、試合3時間分の時間的コストを支払っています。時間は意識しないと無駄にしている感覚が薄いので気が付きにくいです。
こめやん
他にも例えば「とても高級な料理を購入したけれど、食べてみたらとても不味く、全く好みではなくても、高いお金を払ったからと言って頑張って全部食べる」といったことです。まずいから食べるのも時間がかかるし、せっかくの食事も別の美味しいものを食べればよいのに食べたくもないもので胃を満たし、さらには気持ち悪くなってしまうなど、良いことはありませんよね?それでも支払ったコストを回収しようと考えてしまう傾向があるのです。
時間は大切なものであるにも関わらず軽視してしまう傾向があるので注意しましょう。
恋愛のサンクコスト効果
サンクコスト効果は「恋愛」にも見られます。
片思いの相手がいる場合、その人に対して好意を持ってもらうために
- 食事を奢る、プレゼントする(金銭的コストを払う)
- 仕事を手伝う(労力のコストを支払う)
- 会話や連絡をする(時間のコストを支払う)
などの行動をとると思います。そうすると相手に対して費やしたサンクコストを取り返そうと脈なしだろうが後に引けずずっとアプローチしてしまったりすることになります。何でこんなに費やしている振り向いてくれないのか?という気持ちになりストーカーに発展することもあるでしょう。恋愛においても費やしたサンクコストの対価を相手に求めようとしてしまうのです。本来はコストをかけた量が大きければ、対価として相手が振り向いてくれるというものでは無いことを当人も理解していても、内心で対価を求める心理・サンクコスト効果が現れてしまうのです。
ギャンブルにハマってしまう心理
パチンコやスロット、競馬や競艇などのギャンブルは単純に遊戯として楽しむだけであればまだ健全ですが、のめり込む人の多くは当てて大きな掛け金を得ることに注目してしまっていると思います。ギャンブルにハマる理由はお金だけではないですが、大きな当選金は射幸心を煽る要素の一つです。
ギャンブルをやっている人の話を聞くと良く「トータルで〇〇円勝っている」とか「今月はプラス〇〇円」などというような言葉良く聞くように、ギャンブルにかけたお金に対してプラスかマイナスか?というのが一つの原動力になっているように思えます。つまり、1万円のコストをギャンブルにかけたら、少なくとも1万円は手元に戻ってくるまでやりたくなってしまうのです。これはまさしくサンクコスト効果です。1万円のコストを支払ったためそれに見合う対価を求める心理が働きます。ギャンブルは親が勝つような仕組みになっているため、基本的に客は確率的に「トータルマイナス」になるようになっています。初期投資金額がかえって来ないだけでなく、対価を求めるため、さらに追加投資をしてしまい、どんどんコストが大きくなり、それに伴いサンクコスト効果も強く働くようになるという無限ループにハマります。だからギャンブルにハマる人が多いと考えられます。
株式投資も同じですね。初期投資を回収したいがためになかなか損切りできずに株価が下がっても買い増しして最終的に株価は戻らず回収できないという自体になります。
サンクコスト効果を回避するために
サンクコスト効果は人間のもったいないという意識や自分の行動は間違っていなかったというような過去の行動を正当化したいという意識から生まれると考えられます。サンクコスト効果にとらわれなければ、物事を切り替えて、新しい価値ある選択を掴むことができるようになるでしょう。株式などの投資においてもサンクコスト効果は影響があります。損切りができずにだらだらと投資し続けてしまった結果、大損してしまうというようなことがおこります。
せっかくだから、もったいないからやってみるということももちろん間違いではないと思いますが、それ以外にやれること、やるべきことがある場合には無駄なことに時間を費やさずに新しい選択をしていきたいものですね。
サンクコスト効果にとらわれないようにするためには、長いスケールで物事を考えるようにして、時間が大切だという意識を持つことが重要です。結果的に大きな対価が得られないのならば、それにさらに時間を費やすのはますます無意味なものです。有限な時間を有意義に使うために、その失敗を糧に新たな有用な選択が取れるように行動するほうが長期的にみてお得だと思います。もちろん納得感を得たいというのならば、できるだけ対価を回収してもよいです。このサンクコスト効果はパチンコや競馬などのギャンブルでもみられます。負けた分を取り返すためにさらにお金をつぎ込むなどです。サンクコスト効果を利用した商売とも見れるでしょう。ギャンブルは確率論的には負けるものですから、みんなこれまでの対価を取り戻そうと躍起になってくれるので、ますますお金がつぎこまれるわけですから。
参考文献
- Arkes, Hal R., and Catherine Blumer. “The psychology of sunk cost.” Organizational behavior and human decision processes 35.1 (1985): 124-140.