カルボン酸のアルデヒドへの部分還元は意外と難しいものです。例えばボラン還元によりアルコールまで還元して酸化によりアルデヒドを合成する方法、エステル化して部分還元する方法、あるいはエステルをアルコールまで還元し酸化する方法があります。
ローゼンムント還元は酸塩化物を還元してアルデヒドを得る方法です。酸塩化物はカルボン酸から簡単に調製できるので有用です。
ローゼンムント還元で酸塩化物をアルデヒドに合成
ローゼンムント還元は酸塩化物を還元してアルデヒドに変換する方法です。還元はパラジウムと水素を使った接触還元で、通常はアルコールまで還元が進行してしまうところを触媒毒を使うことで反応性を低下させて部分還元を達成しています。
触媒としては硫酸バリウムを担体としたPd/BaSO4を使って加熱する方法が一般的です。
ローゼンムント還元の特徴
カルボン酸を直接還元してアルデヒドを効率的に合成する方法は少ないです。
ローゼンムント還元は酸塩化物に変換するため1ステップ経路が増えますが、直接還元するよりも容易にアルデヒドが得られます。
脂肪族、アリール、芳香族カルボン酸に対して利用できます。
触媒毒を添加する方法
パラジウムは硫黄や窒素、リンなどが触媒毒として働きます。特に酸塩化物合成で利用する五塩化リンなどのリン系の試薬は生成物中に残存しやすくこれが触媒毒として働くため、塩化オキサリルによる酸塩化物合成法を使うのが好ましいです。
通常のPd/Cに2,6-ルチジンを加える方法が便利です。溶媒はTHFを使います。
2,6-ルチジン添加法
2.9gの10%Pd / Cを脱水THFに加えて2,6-ルチジン(21.2g、198 mmol)および酸塩化物(29.8g、181mmol)を加え、水素置換下、室温で24時間撹拌した。反応混合物をセライト濾過し、濃縮し、CH 2 Cl 2(500 ml)に再び溶解し、水(200 ml)、1N HCl(200 ml)、水で洗浄後、濃縮し目的物(20.2g、85%)を得た。