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変異原性とは?変異原性物質の影響とは

変異原性物質とは

変異原性物質とはDNAと反応して突然変異を誘発する化学物質のことです。

変異原性(mutagenicity)に似たものとして遺伝毒性(genotoxicity)がありますが、遺伝毒性は変異原性よりも広い意味をもちます。
遺伝毒性はDNA以外のRNAや関連するたんぱく質に対する変化を通じて異常を引き起こすものも含みます。

遺伝毒性や変異原性については混同しやすいので注意が必要ですが、定義があいまいで場所によって使われ方が異なっているようです。

変異原性物質

変異原性物質はDNAに化学変化を引き起こします。

代表的なものは塩基窒素の修飾です。

ヌクレオシドの求核性

グアノシンN7 > アデノシンN1 > シチジンN3の順番で反応が起こりやすい

特にグアニンのN7位は求核的で反応が起こりやすいことが知られています。

Shabarova, Zoe A., and Alexey A. Bogdanov. Advanced organic chemistry of nucleic acids. John Wiley & Sons, 2008.

アクリルアミドの変異原性

変異原性物質がDNAとどういう反応するのか具体例を見てみましょう。

代表的な変異原性物質である「アクリルアミド」は合成樹脂などの原料として工業的に用いられている他にポテトフライなどの揚げ物など高温調理する幅広い食品から検出されており、その摂取リスクについて注目されています。

アクリルアミドは体内で代謝されてグリシダミドに変化しそれがDNAと化学反応を引き起こします。

グアニンのN7アルキル化

グアニンのN7アルキル化

グリシダミドはアクリルアミドがCYP2E1による代謝を受けて生成する酸化代謝物です。

アクリルアミド自身も求電子性を示すマイケルアクセプターですが、代謝物のグリシダミドのエポキシドもまた強力な求電子剤であり、DNA中の求核性部位とより反応しやすくなっています。こうしてグアニンのN7が修飾された塩基はもとの機能を持ちません。

変異原性物質の特徴

変異原性物質として知られる物質にはアクリルアミドのように求電子性を示すものが多いです。

ベンゾピレン

ベンゾピレン( benzo[a]pyrene)は変異原性を示す物質として知られています。

ベンゾピレンは代謝を受けてエポキシドを生じる

ベンゾピレンの代謝物に含まれるエポキシドは求電子的であるため塩基の求核性部位と反応します。

アセトアルデヒド

エチルアルコールの代謝物であるアセトアルデヒドは強力な求電子性を示し、求核剤と容易に反応します。

アフラトキシン

アフラトキシンはピーナッツやピスタチオなどのナッツ類でよく検出されるカビによって算出される毒素です。

アフラトキシンB1はアフラトキシン類で最も強い毒性を示します。

アフラトキシンの変異原性はCYPのよる酸化によって生成するエポキシドによるものです。

アフラトキシンの毒性

アフラトキシンの毒性

trp-p-1 (ヘテロサイクリックアミン )

肉や魚といったタンパク質を加熱調理すると変異原性を示すヘテロサイクリックアミンが生成します。

trp-p-1はトリプトファンの熱分解物として知られています。

ヘテロサイクリックアミンの毒性

トリプトファンの熱分解物trp-p-1の変異原性

trp-p-1がCYPにより酸化されて生じるヒドロキシルアミンはさらに酵素代謝を受けてアシル体を生じます。アシル体が分解すると求電子な中間体が生成します。

第一級アミンを持つ芳香族アミン類には変異原性を示す物質が多く知られています。

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