⚠️ 記事内に広告を含みます。

MTM基によるアルコールの保護

MTM保護とは

MTM基(メチルチオメチルエーテル)とは

メチルチオメチルエーテル基(MTM基)はアセタール系のアルコールの保護基で、アセタール系保護基でありながら強酸性条件に安定であるという特徴があります。もちろん塩基や酸化、還元条件にも安定で、脱保護には水銀(HgCl2)を用いる必要があります。MTM保護


特徴・利点

MTM基の利点や特徴は

  1. アセタール系保護基でありながら酸性に強い
  2. 直交性が高い(HgCl2で脱保護するため)

欠点としては

  1. 保護化反応が進行しにくい

反応機構

反応機構ー保護

・通常の条件

MTM保護反応機構

・Pojer法

MTM保護反応機構2

反応機構ー脱保護

MTM脱保護反応機構1


反応条件-保護

メチルチオメチルエーテルを導入する方法としてはCorey法(ICH2SMe)を用いる方法が収率が高い。特に第三級アルコールでは山田法(DMSO、Ac2O)で反応させることによってMTM保護体が得られる(アルブライトゴールドマン酸化の副反応を利用しているので第一級や第二級アルコールでは酸化反応が進行する)。Pojer法は山田法に酢酸を加えることによって、第一級や第二級アルコールでもMTM基を導入することができる手法です。

保護条件例1

MTM保護反応例1

THF(27 mL)にNaI(3.61g,24.1mmol)およびNaH(55%、2.10g,48.2mmol)を加え、Ar雰囲気化で0℃に冷却した後、アルコール体(3.00 mL,24.1mmol)を滴下した。混合物を室温に温め、1時間撹拌した。MTM-Cl(1.99mL,24.1mmol)を0℃で加え、室温にもどしながら12時間撹拌し、水でクエンチし、EtOAcで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過し、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc /ヘキサン、5:95)により、精製して保護体(4.54g,22.9mmol,95%)を得た。Nishikawa, Keisuke et al. J. Org. Chem. 2011, 76, 6573.より引用

保護条件例2

MTM保護反応例20℃でDMSO(4.5mL)、アルコール体(120 mg, 0.409 mmol, 1 eq)を溶解した後、氷酢酸(2.25 mL)および無水酢酸(3.0 mL)を加え、室温に戻しながら16時間撹拌した。 0℃に冷却し、炭酸水素ナトリウムで中和し、その後室温で90分間撹拌した。 反応混合物をEtOAcで希釈して有機層を取り出した。水層をEtOAcで1回抽出して、合わせた有機層を飽和NaHCO3水溶液及びブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過、濃縮し、粗生成物をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、保護体を得た(60%)。Andreas, F. Petri, et al. Org.Lett., 2007, 16, 3004.より引用。

脱保護反応例

反応例1

MTM脱保護反応例1

MTM脱保護反応例1

アセトン(1.9 mL)と水(0.1 mL)に保護体(12 mg, 0.017 mmol)を溶解し、NaHCO3(10 mg, 0.119 mmol)およびMeI (1.0 mL, 16.03 mmol)を加えた後45℃で14時間撹拌した。 反応混合物に水及びEtOAcを加え、有機層を取り出し、水層をEtOAcで2回抽出した。 合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過、濃縮し、フラッシュクロマトグラフィーにより精製し、目的物を得た(68%)。Andreas, F. Petri, et al. Org.Lett., 2007, 16, 3004.より引用。

反応例2

MTM脱保護反応例2保護体(15 mg, 0.019 mmol)をCH3CN / H2O(3 mL/0.7 mL)に溶解し、CaCO3(20 mg, 0.2 mmol)およびHgCl2(41 mg,0.15 mmol)を加えて室温で6時間撹拌し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でクエンチした。 懸濁液をセライトでろ過し、ジクロロメタンで3回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(15%EtOAc /ヘキサン)による精製により(87%)を得た。Ghosh, Arun K. et al. Org. Lett. 2007, 9, 1440.より引用。

注意事項ーTips

  • 山田法では第三級ベンジルアルコールでは脱水反応が進行するため保護体を得ることができません。

アルコール保護 アルコールの保護基のまとめ

参考まとめ

Wuts, Peter G. M.. Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis fifth edition (p.44). Wiley

2 COMMENTS

BH3

いつも参考にさせていただいております。
脱保護の反応例1が左右で同じ構造になってしまっていると思ったのでご報告です。ご確認のほどよろしくお願いいたします。

返信する
こめやん こめやん

いつもご覧いただきありがとうございます。
ご指摘の画像を修正しました。

返信する

こめやん へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です