カビというとどういうことをイメージしますか?
水回りに生えるカビですか?それとも、食パンや餅などにわくカビですか?それとも、青カビチーズですか?
カビのイメージって「不潔」とか「汚い」、「古い」、「毒」とか負のイメージが強いのではないでしょうか?
今回は「カビの基本」を取り上げていきます。
身の回りのカビ
カビはどこにでもいます。絨毯の上、カーテン、ソファー、靴、キッチン、風呂場などから、酒、味噌、醤油、チーズ、鰹節などはカビを使って作られています。
カビもちゃんとした生き物ですから、水がある場所、栄養がある場所が好きです。カビは人体に害のある毒素だすものや出さない者もいます。毒を出さないものを食品に生やすことによって、カビがその食べ物を分解して栄養にしていきます。カビの種類にもよりますが、タンパク質がアミノ酸に変換されれば、旨味や風味がでます。糖類が分解されれば、アルコールがでてきてお酒になります。一方である種のカビは病気の原因にもなります。人間は昔から良くも悪くもカビとうまくつきあっています。
カビとは?
「カビ」は見た目が糸みたいになってふわふわしたコロニーを形成するものを総称して呼ぶことが多いです。
カビは単体の生き物を指す言葉ではなくて、複数の菌類の俗称です。
カビはウイルスでも細菌でもない
地球上にはたくさんの生き物がいます。これを分類していくとどこにカビが入るか見ていきます。
まず生物を大きく分けると「細胞性生物」と「ウイルス」に別れます。カビは細胞性生物の方に分類されます。(ウイルスは生物ではないとも考えられる存在です)
細胞性生物は「動物界」と「植物界」と「原生生物界」に分けられます。この中ではカビは「原生生物界」に分けられます。原生生物っぽいですよね
原生生物界は「原核原生生物」「真核原生生物」に別れます。聞き慣れませんが、カビは「真核原生生物」に分類されます。「原核原生生物」は細菌類です。原核生物はDNAをしまっておかないで細胞の中に出しっぱなしの生き物だちです。真核生物は細胞核という器官の中にDNAをしまっておく生き物です。私達人間もこの真核生物に分類されます。
意外かもしれませんが、カビは、大腸菌とか納豆菌などの細菌類よりも、動物や植物の方に近いのです。
真核原生生物のなかで、は「菌類」「藻類」「地衣類」「原生動物」という分類にわかれます。
カビはこの「菌類」に属します。
カビの分類
カビは
「藻菌類」
「子嚢菌類」
「担子菌類」
「不完全菌類」
の4つに別れます。
まず「担子菌類」はよくご存知の松茸、しいたけ、きくらげなどのきのこの仲間たちです。以外に思いますが、これらもカビです。イメージとは違いますが、子実体「いわゆるきのこの食べてる部分」を形成するものはカビっぽくないですが、これを作らないものも「担子菌類」にはいます。その見た目は糸や綿状でカビのようです。
そして、パンを発酵する酵母や、チーズにつける青カビ、醤油や味噌を発酵させる麹カビは「子嚢菌類」という菌類です。
きのことカビは同じ仲間「菌類」に属します。
カビが繁殖しやすい環境
どこにでも繁殖しそうでもカビも生き物なので、植物のように繁殖しやすい環境があります。カビを育てたことがある人は少ないかもしれませんが、同じ菌類のきのこ、しいたけなどは育てたことがあると思います。水分をやらないとキノコが生えてこなかったりするので、意外と難しいものです。
酸素の影響
カビも呼吸します。動物のように酸素が必要で、酸素があるところのほうがよく育ちます。かといって、酸素がなくなるとすぐ死ぬか?というとそうでもありません。胞子などは酸素がある状態になると発芽して増殖が始まります。
それでもやはり酸素がなければ生育できません。「偏性好気性(絶対好気性ともいう)」の生き物です。
二酸化炭素の影響
二酸化炭素濃度も上がりすぎると呼吸障害を起こして増殖が停止します。カビがふさふさ人の眼に触れるところに出てくるのも息したいからなんでしょうか?
温度の影響
カビの発育に温度も影響します。カビと酵母(同じ子嚢菌類でも見た目が違うのでよく分けて語られる)と細菌を比較すると
微生物名 | 生育可能温度 | 最適温度 |
---|---|---|
カビ | 0-40℃ | 25-28℃ |
酵母 | 0-40℃ | 27-30℃ |
細菌 | 0-90℃ | 36-38℃ |
このひょうをみると、細菌は90℃まで生育可能ですが、菌類(カビ・酵母)は40℃までしか生育できません。おおげさに見れば人間とあんまり変わりませんよね。
つまりカビは熱にとても弱いです。熱湯をかけると死んでしまいます。細菌は90℃まで行けるので、100℃の水をかけられても生きているものもいます。
低い温度はどうか?というと、凍結させてもカビは死にません。凍結しても増殖が停止して仮死状態みたいになるだけです。
カビを死滅させたいときは、80℃で10分もすればほとんどのカビは死滅します。ふわふわしている菌糸の部分は50℃で死滅します。一方で乾燥状態の胞子は熱につよいです。120℃以上で1-2時間くわいの加熱殺菌が必要になります。
pH
カビにとって快適なpHは弱酸性です。pHで言えば、pH4-4.5とてもせまい領域です。カビは酸に弱いかというとそこまで弱くありません。お酢ぐらいの酸だったらそんなに効き目はないかもしれません。
実際にカビが生育するpHは2-8.5と広いです。カビをpHで死滅させたいなら、酸よりも塩基性にしたほうが良いでしょう。炭酸ナトリウムアルコール溶液などが良いかもしれないですね。
圧力
圧力は80-100MPaの圧力で死滅します。ちなみに圧力鍋は高くて0.5Mpaです。圧力鍋の圧力ではヤレませんね。
この圧力はタンパク質が変性する圧力なのでカビも死ぬということです。
役立つカビたち
科学の発展にカビは貢献しています。(変な言い方ですが)
例えば、多くの人命を救った抗生物質はカビの観察から発見されたものです。世界初の抗生物質ペニシリンは1928年にアレクサンダー・フレミング博士によって発見されました。その後多くの抗生物質がカビから見つかっています。天然物化学のあり方も、植物から抽出してくるだけでなく細菌、カビを培養して天然物をもってくるという方法も生まれました。