アルミニウムイソプロポキシド・イソプロパノールを利用したカルボニルの温和な還元がMPV還元として知られるMeerwein-Pondorf-Varley還元です。
ケトンやアルデヒドをアルコールに還元します。
機構はアルミニウムアルコキシドからカルボニルへの水素移動によって還元が起こります。
MPV還元の特徴
アルミニウムアルコキシド、特にアルミニウムイソプロポキシドを利用した還元をMPV還元と呼びます。
MPV還元はイソプロパノールからケトンorアルデヒドに水素移動により還元してアルコールを得て、同時にアセトンが生成します。
つまりこの反応は可逆的であり、過剰量のイソプロパノールを加えたり、アセトンを系外に取り出すことで平衡を偏らせる必要があります。
反応性はアルデヒド>ケトンです。
ニトロ基、エステル、オレフィン、アセタール、ハロゲンは反応しません。
αβ不飽和カルボニルの還元はオレフィンを還元しません。
MPV還元は酸の添加により加速されます。酸としてはHClやTFA、ルイス酸などが使用されます。
MPV還元の利点
- 安価で大スケールで利用可能
- 温和な反応条件
- 良好な収率
- ヒドリド還元とは異なる立体選択性が得られる可能性
欠点
- 溶媒が制限されるため低沸点カルボニルは分離が難しい場合がある
- 長時間反応に有する場合がある。
- 立体障害の大きいケトンは還元が難しい
還元はアルミニウムアルコキシドがカルボニルに接近して、六員環繊維状態を経由する機構が提案されており、この機構からも基質の立体が反応性に影響することが示唆されています。実際に立体障害の大きいケトン・アルデヒドの還元は進行しにくいです。加熱やアルミニウムアルコキシドを過剰に加えると反応が進行しやすくなります。また、アルミニウムアルコキシドを自前調整したほうが反応が進行しやすい傾向があります。
MPV還元の副反応
- 塩基性アルコキシドによるアルドール反応
- オレフィン生成(アルコールの脱水)
などが知られています。