ガスクロマトグラフィーに用いる試料が気体の場合は取り扱いが液体や固体のものとは異なります。空気中に含まれる成分などを分析したい場合は、気体を集める必要があります。ここではガスクロマトグラフィーに用いる試料の集め方・注意点を紹介します。
目次
気体試料の集め方
気体試料の集め方は測定したい試料によって最適な方法が変わります。まずは、自分と同じようなものを測定した研究を探してその方法を真似ましょう。
気体試料は大きく分けて
- 気体から直接集める方法
- 固体または液体試料から揮発してくる気体試料を集める方法
があります。
もともと気体であるものを集めるときは気体採取バッグや缶、瓶に集めます。
揮発性成分の気体を集める場合はヘッドスペース法を用います。ガスクロに直接ヘッドスペースの試料を導入できる機器もあります。
また、固相や液相に吸着させて回収する方法もあります。
バック採集法
気密性の高い真空バッグ中に気体の試料を吹き込んで採集する方法です。
呼気、あるいは排ガスなど吹き出す気体を集めるのに有用です。バッグ採集法の利点はバッグの大きさを変えることによって採集ガス量を調節できることと手軽で簡単に採集できることです。
集めたい気体の性質によって適するバックの材質は変わります。フッ素樹脂系のバッグは耐薬品性が高いため、腐食性のガスなどでも使用できますが高価です。ポリエステル製のバッグもよく利用されています。
欠点はプラスチックバッグを変形させるような高温ガスや有機溶媒を含むガスへの利用が難しいことです。
テドラーバッグは有機・無機両方のガスを捕集できますが、材質の有機化合物がブリードしてくることがあるので、有機溶剤などのガスは向いていません。
フッ素樹脂は不活性ですが、有機分子を吸着することがあるので微量試料の分析では気をつけましょう。
ガス採集袋を使った気体の集め方
- 綺麗な窒素ガスでバックの中身を三回置換
- 脱気する
- ガスを入れる
- ガスタイトシリンジで計量してガスクロなどに使用する
真空瓶採集法
ガラス製の瓶で採集する方法です。内部を減圧することによって真空状態にしてガスを導入するため、不純物の混入を最低限にへらすことができます。また、高温、有機溶媒に耐性があります。
真空瓶はガラスや金属であるため吸着などが起こりにくいため、微量物質の分析に向いています。
キャニスター法といってもあらかじめ真空にしておいた金属缶にあるバルブを解放することによって環境空気を採集する方法があります。バルブの開放土によって長期間の気体採集も可能です。
吸着採集法
ガスを吸着する液体や固体試料などが充填された試料管にガスを通じて採集する方法です。測定したいガスの種類がわかっている場合に利用できます。吸着した固体を溶媒などで抽出して測定を行います。
固相に抽出する方法は固相マイクロ抽出:SPMEと呼ばれており、ガスクロ用の気体試料を集めるのによく利用されています。
ヘッドスペース法で試料を集める
固体や液体から揮発した成分を集めるときは密閉できて、ガスタイトシリンジを刺す事ができる構造になっている容器を用意して、その中に試料を入れて密閉します。
適当な温度に容器を加熱して放置するとバイアルの気相(ヘッドスペース)に揮発した試料がたまります。
ヘッドスペース部からガスタイトシリンジで試料を取り出して測定します。
ガスクロマトグラフィーの中には直接ヘッドスペースの試料をインジェクトできる構造担っているものもあります。
採集したガスの濃縮
採取したガスはガスクロや溶液中への吸収などにより濃縮します。
溶液中への吸収はバブリングを行なって吸収させます。目的物がわかっていればその物質と反応する溶液にしておくと効率的に集められます。
こめやん
ガスクロは条件やカラムによって変わりますが、溶出しないような条件にしてガスを通じて濃縮していく方法です。試料ガス中には水分や酸素が含まれている場合があるので注意しましょう。