Crabtree触媒はウィルキソン触媒と同様にオレフィンの接触還元に利用される高活性なイリジウム錯体です。還元しにくい四置換オレフィンの還元も可能で、立体選択性の高さも特徴です。
アルコールやアミド等の官能基への配位により、立体制御した還元が行えます。
クラブトリー触媒の特徴
クラブトリー触媒はRobert H. Crabtreeによって開発されたイリジウム錯体です。
ウィルキソン触媒と同様にアルケンやアルキンの水素化触媒として利用できます。
錯体は空気中でも比較的安定です。触媒は基質が無い状態で水素にさらされると失活します。
触媒は低濃度で使用されることが推奨されています(2.5mol%)
ウィルキソン触媒と比べた利点
同じく均一系触媒であるウィルキンソン触媒と比べた利点は
- 空気安定性が高い(酸素に対する安定性)
- 触媒活性が高い
- 立体選択性が高い
- 反応の容易さ
ウィルキソン触媒は二置換オレフィンに対して3置換オレフィンに対するTOF(TurnoverFrequency)は1/50以下に低下し、4置換オレフィンに対しては不活性なのに対して、クラブトリー触媒は二置換オレフィンに対するTOFは6倍以上も高活性である上に、3置換オレフィン、4置換オレフィンに対して80-90%程度活性を維持しています。
Crabtree, R. H. (1979). “Iridium compounds in catalysis”. Acc. Chem. Res. 12 (9): 331–337
反応はジクロロメタン中で行うことが多く、溶媒脱水や脱酸素などをせずとも室温で反応が進行します。
欠点は
- 比較的高価
- 反応中の失活が起こる
クラブトリー触媒はTCIで100 mg, 9000円で販売されています。
クラブトリー触媒は酸に不安定で原料中にアルコールやアミンが存在すると活性が低下します。
クラブトリー触媒を使った反応
クラブトリー触媒はアルケンの水素化のほか、アリルアルコールをケトンに異性化させたり、アリルエーテルをエノールエーテルへの変換に利用されています。
クラブトリー触媒による還元反応例
原料(200 mg、0.65 mmol)のCH2Cl2(5 mL)溶液に23℃でクラブツリー触媒(156 mg、0.19 mmol)加えて、水素雰囲気下(1 atm)で12時間撹拌した後、真空で濃縮し、カラム精製により目的物を91%の収率で得た。
クラブトリー触媒は同じく均一系触媒のウィルキソン触媒よりも活性の高く、4置換オレフィンを還元することができます。
アルデヒドが存在してもアルデヒドを侵すことなく還元することに成功している例もあります。