アルコールの酸化でカルボン酸を得る方法はたくさんあります。基本かつ実用性のある酸化方法が「過マンガン酸カリウム」を使った酸化です。
過マンガン酸カリウムは脂肪族アルコールからベンジルアルコールなどの芳香族アルコールを参加してカルボン酸にします。
過マンガン酸カリウムは強い酸化剤なので望まない酸化が起こる可能性があるのが欠点ですが、単純なアルコールで使える場合は非常に簡単にでおすすめです。
本記事では、過マンガン酸カリウムを使ったアルコールの酸化反応によってカルボン酸を得る手法を紹介します。
過マンガン酸カリウムによるアルコールの酸化でカルボン酸を得る
過マンガン酸カリウムを使った酸化は選択性はあまりありませんが塩基性過マンガン酸カリウムとして作用させるとアルコールを簡単にカルボン酸に変換できます。
アルコールの他に酸化される官能基は
- アルデヒド→カルボン酸
- スルフィド
- ベンジル位、芳香環のメチル位→カルボン酸
- アルキン→ジケトン
過マンガン酸カリウムが反応する官能基はたくさんありますが条件によって変化します。
より精密な酸化を行う場合はアルデヒドを経由して酸化する方法が便利です。
過マンガン酸カリウムを使ったアルコールの酸化反応条件
アルコール(145mg、0.53mmol、1当量)を1M NaOH(2.7mL)に溶解し、KMnO 4(376mg、2.39mmol、4.5当量)を加えて室温で4時間撹拌した。 2-プロパノール(4 mL)を加え、溶液を40分間攪拌して過剰な過マンガン酸カリウムをクエンチした後、副生成物の Mn2Oをろ過し、2-プロパノールで洗浄、濃縮し、EtOAc(30 mL)および1 M KHSO4(10 mL)を加えて分液、濃縮後、精製して95%の収率で得た。
Boc基は耐えます。多少の化合物であれば高収率で第一級アルコールをカルボン酸に変換できます。
アデノシンの酸化
アデノシン(10.08 g、0.033 mol)を0℃で氷酢酸(300 mL)に溶解し、KMnO4(11.89 g、0.07 mol)をゆっくりと加えます。添加後、溶液を室温で24時間撹拌した後、脱色するまで10%過酸化水素で処理し、濃縮、クルードを氷水で冷却して生じた沈殿を濾過によって回収し、目的物を89%の収率で得た。
アデノシンのアセタールやアセトニドは侵されず、窒素も酸化されずに一級アルコールがカルボン酸に変換されています。
その他の基質
ジアジリンを含むベンジルアルコールを酸化(KOH,KMnO4、水、ジオキサンを溶媒として、14h, rtで85%:Organic Letters, 11(21), 4882-4885; 2009)
ヘキサノールは開裂してアジピン酸を与える。
過マンガン酸カリウムによる酸化は立体障害を受けにくく、込み入った箇所のアルコールの酸化も可能です。