有効数字は気にしていないと忘れがちですが、測定値の信頼性を考える上では重要なものです。
この記事では、どの桁数までを表示するか?どうやって有効数字を決めるのか?
有効数字とは?
有効数字(Significant figure)は信頼できる確実な数字と最後の桁は不確かな桁からなる数字です。
有効数字の処理をした123.35の有効数字は5桁です。
この数字の123.3までは確実な値であり、小数第2位の123.35は不確かな値です。
測定量には必ずばらつきが存在します。そのばらつきが大きければ信頼できる桁数は少なくなり、ばらつきが小さければ信頼できる桁数は多くなります。
例えばある体重計Aは60.58kg 60.54kg 60.55kgと小数第1位までは揃っていますが、小数第2位はずれています。なので、60.5までしか確実では無さそうです
ある体重計Bは60.51kg 60.61kg 60.42kgと同じく小数第2位まで表示されていますが、60までしか確実では無さそうです。
このように化学においては有効数字は測定値のばらつきによって決定すべきであり、表示桁数で決めるものではないのです。
測量値の読み取りと有効数字の決定
ビュレットやメスシリンダーなどアナログの目盛りの場合は最小表示の1/10まで読み取ります。
最小の目盛りが0.1mLの時は0.01mLまで読み取ります。例えば12.34mLと読み取ります。
このときの有効数字は4桁になります(0.1mLまでは確実だが0.01mLは不確実)。
一方デジタルの場合は最小目盛りまでが有効数字になります。
しかし、実際の有効数字は複数回の測定からのばらつき(標準偏差)から導き出すことが望ましいです。
測定回数 n= 4 した結果、12.5, 12.9, 12.4, 12.1 平均値= 12.475, 標準偏差 =0.286
標準偏差から±0.286のばらつきがあることから、少数第1位は不確かであることがわかります。
したがって有効数字は2桁で表示するのが望ましいです「12」。
平均値の実験標準偏差
平均値の実験標準偏差は標準偏差 ÷ √n
で表されます。先例の数値では、0.286÷√4=0.143
この平均値の実験標準偏差を標準不確かさと言います。
測定値から導き出された実験標準偏差は「平均値からどれだけバラついているか」を表す値です。
一方でこの実験標準偏差を試行回数の平方根で割った値「平均値の実験標準偏差」は平均値のばらつきを意味します。
試行回数が増えるほど標準不確かさは小さくなります。
有効数字の桁数の数え方
有効数字何桁かどうやって数えるのかを紹介します。
有効数字は、「左から0以外の数から数え始めて最後まで数えます」
言葉だとわかりにくいので例を示します。
123.4の場合は有効数字4桁です。
0.001234の場合も4桁です。左から0でない1から数えます。
123.00の場合は5桁です。小数点以下はゼロも数えます。
123は3桁です。
それでは100は?これは実は混乱する表記です。
素直に考えれば3桁です。しかし、例えば100gずつしか測定できない秤ではかったとしても100と表示できてしまいます。1mgを1000μgと表記を変える場合も考えられます。
なので100を有効数字1桁とする場合があります。
混乱を避けるために100.と小数点を打つか不動小数点表記で1.00x102と表記して0をつけて有効数字がはっきりとわかるようにしましょう。
有効数字の桁数の減らし方(丸め方)
有効数字を出す時に、桁数を減らす作業を「丸める」と言います。日本工業規格JIS に丸め方の規格が規定されています(JIS Z8401)。
基本的には「四捨五入」をします。
JIS Z8401の規格に従った場合に気をつけることは、125.5のように5を丸める時です
丸めた後の最後の桁が偶数になるように丸めます。125.5の場合は奇数なので「126」になります。(5を切り上げ)
一方124.5の場合は最後の桁が偶数なので「124」になります。(5を切り捨て)
有効数字同士の計算
数字同士を足し算、掛け算をするときはまず測定値の数字を丸めて有効数字を出します。
有効数字同士の計算って簡単そうですがやってみると意外とわかりにくいのでまとめました。
有効数字同士の足し算と引き算
10.5+10.2は20.7ですね。
これは全て有効数字が3桁なので問題ないです。
一方、10.5+10.24はどうでしょうか?
こちらは有効数字が3桁と4桁です。
有効数字同士の足し算では、有効数字の桁位が高いものに合わせます。つまり答えの有効数字の桁位が高いのは小数第1位ですね。
計算結果は20.74ですが、これを小数第1位までの表記にします。したがって小数第2位を四捨五入して20.7が答えです。
有効数字同士の掛け算とわり算
有効数字同士の掛け算とわり算はどのようにして計算するのでしょうか?
掛け算では「有効数字の桁数が一番小さいものに合わせます」
10.5 × 10.24 =107.52
掛け算も有効数字を確認します。10.5は有効数字3桁、10.24は有効数字4桁です。
107.52を有効数字3桁に丸めると、少数第一位を四捨五入して「108」です。
こめやん
加減と乗除が混じった計算
有効数字の計算は乗除算を行って有効数字揃えてから、加減算を行います。