梅干しに殺菌作用はあるの?
お弁当に梅干しを入れると腐りにくくなるということを聞いたことがあると思います。
昔ながらの知恵とされていますが、これは科学的に効果があるのでしょうか?ここでは梅干しの殺菌効果について科学的に検証していきたいとおもいます。
腸チフス・コレラ菌に対する殺菌効果
実は昭和9年にはすでに梅干しやワサビ、しょうがなど日本でよく用いられている調味料に関して殺菌効果があるのか調べた研究があります。
鐵本總吾. “諸調味料の腸チフス菌及びコレラ菌に對する殺菌力.” 日本農芸化学会誌 10.2 (1934): 123-127.
この研究で調査された調味料としては、
- わさび
- 大根おろし
- しょうが
- うめぼし
- ソース
- 醤油
- 酢
です。この中で殺菌力が高かったのは酢、梅干し、ソースでした。この研究では殺菌効果はクエン酸、酢酸等の有機酸成分によるものであると考えられています。
この他にも大腸菌や赤痢菌などに対しても殺菌効果があるといわれています。
黄色ブドウ球菌と大腸菌に対する抗菌活性をペーパーディスク拡散法・短時間殺菌法によって検討した報告もあります。
岩啓子, and 野村秀一. “梅干し中の有機酸及びアミグダリン関連物質の抗菌作用.”
この研究では従来より梅干しの殺菌作用には複数の有機酸による相乗作用が見られるという知見を支持する結果が得られています。
殺菌成分として有機酸に加えて梅に含まれる特徴的な成分として青酸配糖体のアミグダリン、ベンズアルデヒド、ベンジルアルコールを試験しています。
- クエン酸
- リンゴ酸
- 酢酸
- シュウ酸
- ギ酸
- コハク酸
- アミグダリン
- ベンジルアルコール
- ベンズアルデヒド
- 安息香酸
ペーパーディスク法によるとクエン酸、リンゴ酸、酢酸、シュウ酸、ギ酸に抗菌作用を認めました。高濃度域では酢酸に強い抗菌作用が見られました。クエン酸・リンゴ酸・酢酸の混合溶液はクエン酸だけよりも強い抗菌作用を示しています。
また、梅干しには食塩が含まれていますが、梅干しの抗菌作用は食塩の静菌作用との相乗作用が発現していることが短時間殺菌作用の試験により示唆されています。
梅に含まれる有機酸
梅に含まれる有機酸を分析した研究によると梅の状態にもよるが有機酸の含量としては多い順に以下のようになる
- クエン酸
- リンゴ酸
- 酒石酸
- ブタン酸
です。青梅はブタン酸の含量が多いです。
代谷沢, and 井口和代. “梅の有機酸に関する研究.” 調理科学 2.3 (1969): 179-182.
まとめ
梅干しには殺菌効果が認められています。これは梅干しに含まれる酸成分によるものです。ただし、日の丸弁当のように梅干しを一粒いれるだけではその周辺くらいにしか効果は見られなそうですね。抗菌効果を狙うには身をつぶしてあえたほうが良さそうです。
うめぼしの殺菌作用もそうですが、酢酸にも高い殺菌作用がみられることから酢飯にするのは腐敗防止には効果的だと思われます。
酢飯の防腐効果については下記の論文で長期の効果を求めるほどではないが実用的な方法であると評価されています。
長井摂郎. “食品の調理法と保存性に関する研究 (第 1 報).” 栄養学雑誌 18.5 (1960): 235-244.