サルパという生き物をご存知でしょうか？透明でぷにぷにしたクラゲのような体を持ち、巨大な鎖状の形をしながら全長は人のサイズを超える。海で釣りをしたときに引っかかったり、浜に打ちあげられたりすることもあるようです。なんとこの生物の成長スピードは尋常ではないようなのです。一体このサルパという生き物は何者なんでしょうか？
目次
サルパという生物
サルパという生物を知っていますか？
このサルパは実は世界最速で成長する生き物として有名です。
鎖のように連なった形をしているサルパはそれが一体のサルパではなく、鎖の一つ一つがサルパ一体で、たくさんのサルパがつらなっています。ゼリー状の身体の中にはピンク色の謎の球体が浮かんでいます。このサルパには他にも面白い特徴があります。
サルパの驚異的な成長スピード！
サルパは成長が早く一日に体長が30%以上も大きくなることがあります。中央値でも一日に10%程度大きくなることからその驚異的な成長スピードが伺えます。[Madin, Laurence P., and Jennifer E. Purcell. “Feeding, metabolism. and growth of Cyclosalpa bakeri in the subarctic Pacific.” Limnology and Oceanography 37.6 (1992): 1236-1251.]
サルパはその個体が仲間と一緒に鎖のように連なった形をしているのでそんななスピードで大きくなったら全長で見ればものすごいインパクトがアリそう！
ジェット推進で水中を移動できる！
サルパはその体内に海水を通してジェット噴射することによって、海中を移動しています。複数個体が連なっているのも、移動に適しているからだと考えられています。このジェット推進機構は動物界の中では最も効率的なものであると言われています。[Bone, Q., and E. R. Trueman. “Jet propulsion in salps (Tunicata: Thaliacea).” Journal of Zoology 201.4 (1983): 481-506.]
あんな原始的な形をしていても、移動の仕方は超効率的なジェット噴射で移動とはなかなかすごい生き物に感じてきました
海洋の植物プランクトンを食べ歩き！？海域のプランクトンを食い尽くす！
サルパ類はその成長スピードに比例してとってもたくさん食べます。サルパが海に出現すると、その周辺の植物プランクトンを食べつくすといわれています。ジェット推進機構を利用して、海水をろ過して食べまくります。
つまり、サルパはジェット噴射のために海水を取り込むのと同時に水中のプランクトンを濾して食べまくっているのです。効率的なジェット噴射のために取り込む海水のろ過スピードは毎時数百~数千mLに達するとも言われています。
こめやん
クラゲよりも高等な生物 ー 脊索動物
サルパはまるで海を漂うクラゲのように見えますが、原始的ではあれ、神経系をもつ脊索動物です。クラゲよりもサルパのほうが人間などの脊椎動物により近いということになります。ちなみにホヤなども同じように原始的な神経系を持っています。サルパは尾索動物亜門タリア綱サルパ目サルパ科に属する生き物で、タリア綱にある仲間はタルのようなフォルムをしているウミタルやヒカリボヤと呼ばれる生き物が属しています。タリア綱にいる生物は濾過摂食をしているようです。
サルパはクラゲのようでも全く別の生き物なんですね。
サルパは日本にも出現！漁を邪魔する厄介者
サルパは南極海に多く見られるようですが、日本周辺の海洋にも出現していて、時折、漁の網に引っかかることによって漁を邪魔します。エチゼンクラゲなどのクラゲ類も度々漁を邪魔しますが、サルパも時々出現して、漁の邪魔をする厄介者だったんですね
地球温暖化に貢献？サルパの糞は重い
大食漢のサルパは食べた分だけ出すものを出します。このサルパの糞は、海水よりも比重が大きいために、海底に沈むと言われています。大量に植物プランクトンを食べて海底に沈ませることで、炭素源(二酸化炭素)を海底に閉じ込めて大気へと戻る時間を遅めます。サルパは海の炭素循環に大きく貢献していると言われています。サルパの働きが地球環境に直接影響を及ぼしているんですね！
まとめ
もしも海にサルパに出会ったらその遊泳などを観察してみてください。ジェット噴射をしながら泳ぎ食べるさるサルパは成長スピードが速いので見ている間に大きくなったのがわかるかもしれません。サルパの透明な身体はセルロースからなる弱っちい身体をしているので、むやみに握ったりすると死んでしまいます。みつけても優しくしてあげてくださいね！
