画線培養法は寒天培地に線を引くようにして細菌を塗布して培養する方法です。画線培養法は複数の細菌から1種類・同一の遺伝子型を持つ細菌を分離するために使います。
よく使われるのは大腸菌です。大腸菌はたんぱく質やDNAを作り出すためによく利用されます。細菌培養の基本であるため大学の実習でも題材として使われると思います。
今回は画線培養法について紹介していきます。
画線培養法とは?
微生物の特性を調べたり、DNAやたんぱく質を作らせたりするときは同一な遺伝子型を持つ集団を取り出す必要があります。同じ種類の微生物でも遺伝的に違うと性質が変化する恐れがあるので、一個の微生物・細胞から分裂して同じ遺伝子型を持つ細胞を取り出します。
このような培養方法を「純粋培養」といいます。同一の遺伝子型をもつ(クローン)を作成するということから「クローニング」とも言います。
画線培養はクローニング手法の一つで、複数の遺伝子型を持つ細菌集団から一種類の遺伝子型を持つ細菌を取り出すことができます。
なぜそんなことができるのでしょうか?
それは画線培養で培養するとできるシングルコロニーには一種類の遺伝子型を持つ細菌からなることが分かっているからです。
こめやん
画線培養は白金耳などを使って細菌を寒天培地に線を描くようにして塗布していきます。
始点の菌数は多いですが、塗られていくので終点に近づくにつれて徐々に菌数が減少します。そのため、終点付近には1つの菌数のみからなる部分が出てきて、それがシングルコロニーを形成します。
1つのシングルコロニーには数十億くらいの菌数が存在するといわれています。
このシングルコロニーをピックアップすれば一種類の組み換えDNAなどを得ることができます。
またコロニーの数を数えることによって菌数を定量することも可能です。ただし菌数を数える場合は画線培養法ではなくコンラージ棒などを使ったほうが良く、さらにコロニーを作らない細菌もいるので注意を要します。
画線培養法のやり方
平版画線法ともいいます。画線培養法ではシャーレなどにいれた固体の寒天培地を使います。
線は白金耳を使って描きます。
こめやん
画線培養法では白金耳に培養液を塗布した後、寒天培地を3~4つの区域に等分して塗布していきます。
- 白金耳を70%エタノール溶液に浸したのち、バーナーであぶって滅菌します
- 90°に分画した部分に培養液を付けた白金耳を寒天に軽く押し付けてジグザグに線を描く。一度書いた線には触れないようにする
- 白金耳を滅菌し、90°回転させ、先ほど描いた線を複数本触れてから新しい領域に同様に線を描きます
- これを4分画分繰り返す
- 蓋をしめてひっくり返して37℃でインキュベート
動画があるので参考にしてください。最後の区画になるほど菌数は減少していっているはずです。成功すればシングルコロニーが得られるはずです。
培地は使う細菌種によって適するものを選択します。大腸菌であればLB培地はよく利用されます。
白金耳の滅菌
白金耳の滅菌に外炎を使用すると付着した菌液が飛び散る恐れがあるので、まずは柄の部分を還元炎で赤熱して菌液が炭化してから、先端のループ部分を還元炎に入れて加熱し、温度の高い酸化炎で金属部を赤熱させて滅菌します。使用後の白金耳をエタノールなどの消毒液に浸してから滅菌することもあります。
シングルコロニーをさらに培養!
大腸菌から作製したプラスミドを抽出するにはシングルコロニーの大腸菌を取り出してさらに培養する必要があります。
大腸菌を増殖させるときは液体培地を使います。液体培地に対してシングルコロニーの菌を白金耳でとって加えます。これをインキュベートして培養します。
詳しくはプラスミドの抽出・精製の記事で解説していきます。