温泉がアトピー性皮膚炎に有効であると聞いたことがありますが本当でしょうか?
温泉のアトピー性皮膚炎に対する効果を科学的に考察してみます。
アトピー性皮膚炎に有効な温泉の成分は?
アトピー性皮膚炎はかゆみを伴う湿疹が繰り返しできたり治癒したりする病気です。
皮膚の恒常性が低下することにおり皮膚外から細菌等の抗原が侵入してきて、それに対して免疫が反応して抗原抗体反応を起こすことによってアレルギー性の炎症を引き起こすと考えられています。
耐えがたいかゆみがあるため無意識にかきむしってしまいますが、これによりさらに皮膚機能が低下して症状が悪化します。
このようなアトピー性皮膚炎に対して温泉は効果があるというように言われています。しかしこれが温泉のどのような効果によって起こっているのか?わかっていませんでした。
温泉療法の特徴は薬を使わないために副作用が少ないという点です。実際にアトピー性皮膚炎の治療には外用のステロイド剤を使いますが副作用が問題で、確かな効果がある代替医療が求められいます。
川島眞, et al. “日本皮膚科学会編 「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」.” 日本皮膚科学会雑誌 110.7 (2000): 1099.
アトピー性皮膚炎が悪化する原因の一つとして黄色ブドウ球菌があります。皮膚表面に存在する黄色ブドウ球菌が抗原抗体反応を憎悪化させるといわれています。
この黄色ブドウ球菌を殺菌する効果が温泉にはあると草津温泉でのアトピー性皮膚炎の治療研究で報告されています。温泉治療によって症状が改善した患者の皮膚表面から黄色ブドウ球菌が減少または消失したことを報告しています。
著者らは治療効果としては黄色ブドウ球菌の殺菌作用だけでなく温熱作用なども含めて複合的な要因で改善した考察しています。
久保田一雄, et al. “アトピー性皮膚炎に対する草津温泉療法の効果.” リハビリテーション医学 34.1 (1997): 40-45.
さらにカネボウ株式会社の井上は草津温泉中に含まれる殺菌成分の探索をin vitroで行ったところ、殺菌成分として陽イオンのマンガンイオン、陰イオンのヨウ素イオンを同定しました。殺菌効果はおそらく水酸化マンガンと分子状ヨウ素によるものであると考察しています。
井上紳太郎. “皮膚に有用な温泉水成分を探る.” 日本温泉気候物理医学会雑誌 67.1 (2003): 12-13.
温泉のアトピー性皮膚炎に対する効果を科学的に調査することにより、実際にアトピー性皮膚炎に効果を示すメカニズムが見えてきました。アトピー性皮膚炎の治療法の中には科学的なエビデンスが不明なものも多いので注意が必要ですがx)、さらなる研究によってアトピー性皮膚炎の代替治療方法が見つかると良いですね。
アトピー性皮膚炎のある方は温泉に浸かってみると楽になるかもしれません。
x)竹原和彦, et al. “アトピー性皮膚炎における不適切治療による健康被害の実態調査 [最終報告].” 日本皮膚科学会雑誌 110.7 (2000): 1095.