フリーデルクラフツ反応は塩化アルミニウムなどのルイス酸を加えて活性化させて芳香環による求電子置換反応を行う反応です。
求電子剤として二酸化炭素を用いれば芳香環にカルボン酸を直接導入することが理論上可能ですが、実際には収率が低いです。
今回は実用的なフリーデルクラフツ反応を使ったカルボン酸の導入について紹介します。
フリーデルクラフツ-カルボキシル化
フリーデルクラフツ反応でカルボン酸が直接導入できることは昔から知られていました。
実際にベンゼンと塩化アルミニウムに二酸化炭素を吹き込むと低収率で安息香酸が得られ、副生成物としてジフェニルメタンやベンゾフェノンが多く生成します。
Friedel C., Crafts J. M., Ann. Chim. Phys. 1888, 14, 441.
フリーデルクラフツ反応でカルボキシル基を導入するにはアルミニウム粉末とAlCl3を用いるのが良いということが報告されました。
Olah, George A., et al. “Efficient chemoselective carboxylation of aromatics to arylcarboxylic acids with a superelectrophilically activated carbon dioxide− Al2Cl6/Al system.” Journal of the American Chemical Society 124.38 (2002): 11379-11391.
Al粉末は副生するHClの除去に役立っていると考えられています。
この方法ではアルキルベンゼンにカルボン酸を導入することができます。
塩化アルミニウムによるカルボキシル基の導入は以下のような推定機構で反応が進行すると考えられます。
しかし、上記のJACSの論文で詳細を検討した結果以下のような推定機構が提案されています。二酸化炭素と塩化アルミニウムの錯体が反応するモデルです。このモデルはPh-AlCl2を形成するよりも28-38kcal/molも形成に必要なエネルギーが低いようです。
フェノールのカルボン酸導入
電子豊富なフェノールは芳香族求電子置換反応を起こしやすく、特にサリチル酸を合成する手法として「コルベシュミット反応」が有名です。
コルベ・シュミット反応 Kolbe Schmitt フェノールにカルボン酸導入
コルベシュミット反応は塩基触媒とするのに対して、フリーデルクラフツ型反応ではAlBr3を用いることで芳香環にカルボン酸を導入します。
収率は70%程度で得られています。効率ではコルべ・シュミット反応のほうが適しているようです。
Iijima T., Yamaguchi T., J. Mol. Catal. A 2008, 295, 52.